田中修著『植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫』(中公新書2174、2012年7月中央公論新社発行)を読んだ。
表紙裏にはこうある。
身近な植物にも不思議がいっぱい。アジサイやキョウチクトウ、アサガオなど毒をもつ意外な植物たち、長い年月をかけて巨木を枯らすシメコロシノキ、かさぶたをつくって身を守るバナナ、根も葉もないネナシカズラなど、植物のもつさまざまなパワーを紹介。動物たちには真似できない植物のすごさを、「渋みと辛みでからだを守る」「食べられる植物も毒をもつ」「なぜ、花々は美しく装うのか」などのテーマで、やさしく解説。
まえがき
サクラは一本の木に10万個以上の花をほぼいっせいに咲かせる。
第一章 自分のからだは、自分で守る
植物は根から吸った水と空気中の二酸化酸素を材料に、太陽に光を利用して、葉っぱでブドウ糖やデンプンをつくり、生命を維持して成長している。
「万両」「千両」「十両」「一両」は秋から冬に、小さな球形の赤色に熟した実をつける。実の数が多い順に名前が付けられている。
「蕁麻疹」(じんましん)は、棘のあるイラクサ(蕁麻)からきている。
カキの実は、タネのできる前の若いときには、虫や鳥に食べられないように渋みを含み、タネが出来上がってくると、鳥などに食べてもらえるように甘くなりタネを運んでもらう。黒いゴマのように見えるものが、アセトアルデヒドにより渋みの成分のタンニンが不溶性のタンニンに変えられた姿だ。
第二章 味は、防衛手段!
ミラクルフルーツの実を食べてもうっすらとした甘味しか感じないが、その後、レモンのように酸っぱいものを食べると、その酸っぱさを「甘い!」と感じる。
第三章 病気になりたくない!
第四章 食べつくされたくない!
コアラは青酸を含みユーカリの葉を食べるが、腸の中に青酸を無毒にする細菌を住まわせている。子供が生まれると「食い初め」に親は、この細菌を含む自分の糞を食べさせる。
マンゴーはウルシ科で、直接かぶりつくと汁にかぶれ「マンゴーかぶれ」になる。
第五章 やさしくない太陽に抗して、生きる
植物はビタミンCやEを多く持つ。これらは抗酸化作用を持ち紫外線でできる活性酸素の害を防ぐ。
第六章 逆境に生きるしくみ
冬の寒さに耐える植物は、葉の中の糖分を増やし凝固点降下させて凍結を防ぐ。冬の寒さを通り越した植物は甘みを増す。
落花生は、花が咲くと支えていた柄が伸びてメシベの基部にある子房の部分が土に潜り、そこに実がなる。
第七章 次世代へ命をつなぐしくみ
おわりに
植物のすばらしさを心で味わって欲しい。そしてさらに、植物たちの生き方に思いをはせて欲しい。
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
ざっと見ると、身近な植物に関する雑多な豆知識が羅列してある印象がある。しかし、読み進めると、あらゆる驚異は、植物が生き抜くために磨いてきた様々な手段であることを知り、驚かされる。
常識の裏側を教えてくれる本だ。
田中修(たなか・おさむ)
1947年京都府生まれ。京都大学農学部卒業、同大学大学院博士課程修了。現在甲南大学理工学部教授。
アメリカのスミソニアン研究所博士研究員などを経て、専門は植物生理学。
著書『たのしい植物学 植物たちが魅せるふしぎな世界』、『葉っぱのふしぎ 緑色に秘められたしくみと働き』、『雑草のはなし―見つけ方、たのしみ方』、『都会の花と木―四季を彩る植物のはなし』、『花のふしぎ100 花の仲間はどうして一斉に咲きほこるの?タネづくりに秘めた植物たちの工夫とは?』など。
「COMZINE」のバックナンバー「田中修さん かしこい生き方のススメ」が面白い。