hiyamizu's blog

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マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー『刑事マルティン・ベック ロセアンナ』を読む

2016年08月26日 | 読書2

 

マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー著、柳沢由美子訳『刑事マルティン・ベック ロせセンナ』(角川文庫シ3-21、18777、2014年9月25日発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

ボーレンスフルトの閘門で、全裸女性の絞殺死体が見つかった。身元不明の遺体には誰からの問い合わせもなく、事件は膠着状態に陥ったかに見えた時、アメリカの警察から一通の電報が届いた。「ソレハコッチノサガシテイルオンナダ」。ロセアンナ・マッグロー、27歳。この知らせをきっかけに、刑事マルティン・ベックは、ロセアンナと関係をもった男達についての証言を探ってゆくが―。警察小説の金字塔シリーズ・第一作。

閘門(こうもん)とは、水位に高低差のある水路を仕切り、同じ高さまで水を溜めて船を昇降させる装置。

 

 

原題は、Roseanna で、1965年スウェーデンで初版出版。刑事マルティン・ベックシリーズ10作の第1作。日本では1975年英語版からの翻訳が出版。今回はスウェーデン語からの新訳。タイトルは英語版では「ロゼアンナ」だったが、今回はスウェーデン語には“ザジズゼゾ“の音がないので「ロセアンナ」とした(訳者あとがきより)。

シリーズ第2作は『煙に消えた男』で、第4作がもっとも有名な『笑う警官

 

 

 死亡した女性の身元もなかなか判明せず、捜査は地道に刑事が人を訪ねて新たな手がかりを一つずつ得て、少しずつ進展する。このあたりは極めてリアルだ。

まず、鑑識の地道な調査に始まり、死体の顔写真を修整して関係方面へ配り、閘門を通る観光船を調べ、乗客に一人一人当たって写真を集め・・・。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

 50年前に書かれたとは思えないリアルさだ。個性あるがごく普通の警官たちが、地道な捜査を重ねて徐々に犯罪の実像を明らかにしていく。なにしろ、76ページで初めて被害者の名前が判明する。なぜか米国からの電報で判明した被害者はアメリカ人女性だった。

 

1960年代のミステリーはジェームス・ボンドのような卓越した主人公の時代だったのに、刑事、マルティン・ベックはスーパーマンではなく、極めて人間臭く、そこが魅力だ。仕事に理解のない奥さんの文句に耐え、しょっちゅう風邪をひき、胃の調子が悪く食事ができず、吐く。他の警察官もあくは強いが、まったく普通の人間だ。

 ごく普通の警察官が群像として活動する警察小説は意外に大昔に書かれていた。

 

 

マイ・シューヴァル Maj Sjowall

1935年ストックホルム生。雑誌記者・編集者を経て65年から10年間ペール・ヴァールーと“マルティン・ベック” シリーズを10作書き上げる。

 

ペール・ヴァールー Per Wahloo

1926年スウェーデン南部西海岸ハランド県ツール―生。新聞記者を経て作家生活に。62年、執筆中の本の編集者マイ・シューヴァルと出会い、63年から共同生活。同時彼は結婚していたがその後離婚が成立。マイとのあいだに男子が二人いる。75年没。

 

マルティン・ベック シリーズの登場人物

ウィキペディアのマルティン・ベックを参考にしました。)

 

 

マルティン・ベック

スウェーデンのストックホルム警視庁の殺人課主任。

当初警部で、のち警視。年齢は40代から50代。この作品では結婚していたが(妻インガ、長女イングリット、長男ロルフ)、のちに離婚。

 

レンナルト・コルベリ

ストックホルム警察殺人課警部。

シリーズ初期ではベックとコンビ。過去の事故から拳銃を所持しない若手刑事の礼儀作法にもうるさい。妻グンとの間に幼い娘のボディルと息子ヨアキムがいる。

 

フレドリック・メランダー

ストックホルム警察殺人課警部。

後に殺人課から離れるが、記憶力抜群でデータベースとしてその後も度々登場。酒を飲まず、節約家。妻をこよなく愛し、痩せ型でヘビースモーカー。

 

オーケ・ステンストルム

ストックホルム警察殺人課警部補。

若手の刑事で、尾行の名手。

 

エヴァルド・ハンマル

ストックホルム警察警視長。

ベックの上司。叩き上げで、政治の圧力を嫌い、部下にも強要しない。シリーズ途中で定年退官。

 

 

「ロセアンナ」

 

グンナル・アールベリ

モーターラ警察署捜査官

 

ウステルユートランド県警察本部長

 

ラーソン

モーターラ警察署警部

 

エルマー・B・カフカ

米国ネブラスカ州リンカーン市の警察殺人課捜査官。電報、電話、手紙などのみで登場。

 

ロセアンナ・マッグロー

被害女性

 

ソニア・ハンソン

女性巡査。おとり捜査を敢行。

 

 

「煙に消えた男」

 

アルフ(アッフェ)・シックスティン・マッシソン

スウェーデン人ジャーナリスト

 

スヴェン=エリック・モリーン

ジャーナリスト

 

オーケ・グンナルソン

ジャーナリスト

 

ベングト・エイラート・ユンソン

ジャーナリスト

 

アリ・ブック

ブダペストに住む水泳選手

 

テッツ・ラーデベルゲル

ドイツ人ツアーコンダクター

 

テオドール・フルーベ

ドイツ人ツアーコンダクター

 

ヴィルモス・スルカ

ハンガリー人少佐

 

 

 

「笑う警官」

グンヴァルト・ラーソン

ストックホルム警察殺人課警部。

偏屈者。当初コルベリと仲が悪いが、のち意気投合。容疑者に暴力を振るい白状させることがある。

実家は貴族で裕福。衣服や車など高級品好み。海軍に勤務後、商船で世界を巡っていた。なお、クリスチャンソンとグヴァントらソルナの警察官の天敵でもある。「ロゼアンナ」に登場する同名の警視とは別人。

 

エイナール・ルン

ストックホルム警察殺人課刑事。

グンヴァルトの親友。赤鼻のルンと呼ばれ、鼻をいつもハンカチでこすっている。悪筆かつ難解な文章を書く。ラップランド出身でサーメ人の妻と息子が1人。

 

エーク

警察本庁殺人捜査課捜査官

 

オーサ・トレル

オーケ・ステンストルムの恋人。婦人警官となる。

 

イェルム

ストックホルム警察鑑識課主任

 

ペール・モンソン

マルメ警察署警部。

地方警察のベテラン。探し物の名人。禁煙のために爪楊枝をよく噛んでいる。妻とは別居。

 

ウルフ・ノルディン

スンズヴァル警察捜査官

 

ベニー・スカッケ

ストックホルム警察殺人課警部補。

若手の刑事。シリーズ途中でマルメ警察署のモンソンの部下となるが、ストックホルム警察に復帰。

 

スティーグ・マルム

ストックホルム警察警視長。

ハンマルの後任で、ベックの上司。官僚上がり。警察の実務経験が無い。何かにつけて大掛かりな捜査体制を敷きたがる。

 

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