東野圭吾著『ラプラスの魔女』(2015年5月15日KADOKAWA発行)を読んだ。
宣伝はこうだ。
円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、行動を共にするにつれ彼女には不思議な《力》が備わっているのではと、疑いはじめる。
同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。検証に赴いた地球化学の研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。
価値観をくつがえされる衝撃。物語に翻弄される興奮。
作家デビュー30年、80作目の到達点。
これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。
そしたらこんな作品ができました。 ――東野圭吾
2018年映画公開予定。三池崇史監督、嵐の櫻井翔が青江教授、広瀬すずが羽原円華、福士蒼汰が失踪青年役。
”ラプラスの悪魔”とは世界の全てが把握できる超人のこと。ある時点での全ての物質の力学的状態が分かって、すべてのデータを計算する能力があれば、その後の世界の状態はすべて計算できるから、未来はすべてわかるというニュウートン力学に基づく考え方。フランスの数学者・ラプラス(1749年〜1827年)が提唱。
量子力学の原子の位置と運動量の両方を正確に知ることは不可能という不確定性原理により否定。
初出:書下ろし
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
452ページの大部だが、スイスイ読めるのは東野さん、さすが。
それ程の謎でもないのだが、不可思議現象や、謎めいた怪しげな人物をなかなか登場させないで引っ張るテクニック、やたら多くに人を登場させて、話を引っ張っていく。
単純物理の決定論を持ち出す必要はなかったのではと思うが、これも雰囲気づくりか?
それにしても登場人物が多すぎる。下記のように29名。海馬の短期記憶力が衰えて、新たに人物が登場する箇所に付箋を付けただけでは混乱して読み進められない。一回しか登場しない人物は名前を書かないなどしてくれないと、出てくる人物をパソコン入力しながら読んでいる私は無駄な労力で疲れてしまう。
登場人物
羽原円華(うはら・まどか):18歳。開明大学の数理学研究所で過ごす。彼女の周りでは不思議な現象が起る。
羽原美奈(うはら・みな):円華の母。
羽原全太朗(うはら・ぜんたろう):円華の父。開明大学病院の医師。脳神経細胞再生の第一人者。
蛯沢弓子(えびさわ・ゆみこ):円華の祖母、美奈の母。
青江修介:泰鵬大学教授。地球科学の学者。赤熊温泉の火山ガス中毒死の調査依頼を受けた。
奥西哲子:青江の秘書
磯部:県の環境保全課職員で赤熊温泉村に出向。
武尾徹(たけお・とおる):警護の仕事をする元警察官。
桐宮玲(きりみや・れい):開明大学の数理学研究所勤務。
前山洋子:秘湯・赤熊温泉の宿の女将。
木村浩一:20歳そこそこの若者。
水城義郎(みずき・よしろう):映像プロデューサー。66歳。赤熊温泉で散歩中に死亡。
水城千佐都(みずき・ちさと):義郎の妻。和風美人。28歳。源氏名レイカ。
水城ミヨシ:義郎の母。88歳。調布の老人ホームに住む。
矢口直也:水城千佐都と昔の知り合い。銀座『レッド』の店員。
甘粕才生:映画監督。鬼才と評価されていたが、47歳の時、自宅での硫化水素事故で家族を失う。
甘粕由佳子:才生の妻。事故で死亡。
甘粕萌絵(もえ):才生の娘。事故で死亡。
甘粕謙人(けんと):才生の息子。事故から奇跡的に快復。
吉岡宗孝:映画監督
那須野五郎:本名森本五郎。最近では仕事も来ない役者。39歳
大元肇:脚本家。甘粕才生の知人。
根岸:文芸書籍編集部・編集長。甘粕才生の本を出版。
西村弥生:甘粕萌絵の高校の同級生。
鈴木由里:甘粕萌絵の高校の同級生。
川上誠也:甘粕謙人のサッカークラブの友人。
宇野孝雄:甘粕才生と中学・高校の友人
内川:北陸毎朝新聞の記者。40代半ばの小柄な女性。
中岡祐二:麻布北警察署殺人課。水城ミヨシから事件前に調査依頼の手紙をもらう。