東野圭吾著『麒麟の翼』(講談社文庫、ひ17-31、2014年2月14日講談社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
「私たち、お父さんのこと何も知らない」。胸を刺された男性が日本橋の上で息絶えた。瀕死の状態でそこまで移動した理由を探る加賀恭一郎は、被害者が「七福神巡り」をしていたことを突き止める。家族はその目的に心当たりがない。だが刑事の一言で、ある人物の心に変化が生まれる。父の命懸けの決意とは。
加賀恭一郎シリーズ第9作目。『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』として阿部寛主演で映画化。
日本橋の中央の麒麟の像には、「ここから羽ばたく」という意味を込め大きな翼が付けられている。
日本橋の欄干にもたれかかる男・青柳武明の胸にはナイフが刺さっていた。なぜ青柳は瀕死の状態のままここまで歩いて来たのか。加賀、松宮らによる事件捜査が始まる。附近の公園で職務質問された八島冬樹が逃走し、トラックにはねられ、昏睡状態になった。彼の持ち物からは被害者の財布、免許証などが発見され、警察は八島を犯人として捜査を進める。
一方、青柳が本部長を務める会社で「労災隠し」があり、八島はその被害者であることが分かってきた。
果たして、八島は犯人なのか。青柳はなぜ瀕死の状態で日本橋まで歩いてきたのか。加賀と松宮はその真相に挑む。
初出: 20101年3月講談社より単行本として刊行
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
加賀の透徹した推理と地道な情報集めが徐々に秘密のベールをはがしていく。物語の展開は見事で、スイスイ読める。
加賀、松宮など主な登場人物の内面が十分に描かれるわけではないので、物足りない読者もいると思うが、シリーズの多くを読んでいれば、言葉や行動の背景が分かり、シリーズ愛好家だけが微笑むという仕組みになっている。
最後の謎解きは、ピッタリ腑に落ちるわけでもなく、多少強引な理屈付けに思える。しかし、父と息子の不器用な思い合いは良く書けている。勝手なこと言わせてもらうと、東野さんのお父さんは時計屋さんで、頑固な職人気質と想像され、いろいろな思いがあるのでは??
登場人物が約24名で、他の作品に比べればましだが、多い。一気読みしないと、「忘れる力」が強い私にはキツイ。いつものように、新たな登場人物名をパソコンに打ち込みながら読んだ。
以下、メモ
登場人物
加賀恭一郎:日本橋署の刑事(警部補)。剣道の元日本チャンピオン。かって警視庁捜査一課にいた。短期間だが中学で教えていたこともある。
加賀隆正:恭一郎の父、2年前に死亡
松宮脩平:警視庁捜査一課の刑事、恭一郎の従弟。シングルマザーの母親に育てられる。
小林:警視庁捜査一課の主任
石垣:警視庁捜査一課の係長
坂上、長瀬:警視庁捜査一課
安田:日本橋署の交番の巡査、被害者発見
藤江:日本橋署の刑事課係長
金森登紀子:2年前に加賀隆正が亡くなったときに看取った看護師
青柳武明:日本橋の事件での被害者。55歳。建築部品メーカー「カネセキ金属」製造本部長。
青柳史子:被害者の妻で悠人と遥香の母親。
青柳悠人:武明の息子。修文館中学では水泳部。高校の担当教師は真田。
青柳遥香:被害者の娘で悠人の妹。父親の死に対する周りの態度に悩まされている。
八島冬樹:日本橋の事件の容疑者。26歳。派遣されていた「カネセキ金属」で、事故で契約を切られた。
中原香織:八島の恋人で同棲中。福島県出身で八島と一緒に養護施設で育った。
小竹芳信:「カネセキ金属」工場長。青柳武明の直属の部下。
山岡:「カネセキ金属」の製造二課長
小野田:「カネセキ金属」の製造二課の班長
横田:八島の同僚の派遣社員
糸川:悠人たちの修文館中学水泳部顧問。
杉野達也:悠人の友人。修文館中学水泳部仲間でもあり、高校も一緒である。
黒沢翔太:悠人の友人。修文館中学水泳部仲間。
吉永友之:修文館中学水泳部の後輩。練習中の事故により今も意識を戻していない。
吉永美重子:知之の母