東野圭吾著『秘密』(文春文庫ひ13-1、2001年5月10日文藝春秋発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。映画「秘密」の原作であり、98年度のベストミステリーとして話題をさらった長篇、ついに文庫化。解説・広末涼子、皆川博子
自動車部品メーカーの生産工場で働く39歳の杉田平介は妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美と暮らしていた。長野の実家に行く妻と娘を乗せたスキーバスが崖から転落してしまう。 妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。
その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密"の生活が始まった。 外見は小学生ながら今までどおり家事をこなす妻は、やがて藻奈美の代わりに 新しい人生を送りたいと決意し、私立中学を受験、その後は医学部を目指して共学の高校を受験する。年頃になった彼女の周囲には男性の影がちらつき、平介は妻であって娘でもある彼女への関係に苦しむようになる。
単行本:1998年9月文藝春秋刊
「『秘密』との日々」
巻末に映画化の様子を当時19歳だった広末涼子が書いている。18歳の藻奈美と40歳の直子の2役だ。直子の部分をまとめて撮影したのだが、直後に逢った友達に
「涼子、どうしたの? おばさんぽいよ」と言われ、大ショック。どうも、しぐさやノリが元に戻っていないらしいのです。皆さん、想像してください。「どっこいしょ」という掛け声なしには動けず、立っているだけで自然と腰に手がいく19歳を・・・。「残り少ない十代なのに!」と本気であせりました。
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
無理スジが気になるが、まあ、東野さんの筆力は認めよう。面白くスラスラ読んだ。
妻が娘の体に乗り移るなど、おぞましく感じてしまう。そういう私は変なことを考えているからなのだろうか。
妻も結局若いツバメを得てルンルンなどと余計なことを考えてしまう私は、ますます変?
最後の妻の決断も、結局今後も両者はまったく没交渉ではないだろうから、変な関係をひきずることになるだろう。
登場人物
杉田平介:自動車部品メーカー・ビグッドの生産工場の班長、39歳
杉田直子:平介の妻、平介に3年遅れて入社
杉田藻奈美:平介と直子の娘、小学5年生
橋本多恵子:藻奈美の担任教師、ほっそりした美人、20代半ば
容子:直子の姉、婿養子をとり、実家の蕎麦屋を継いでいる。
富雄:容子の夫
三郎:直子の父
山岸:藻奈美の担当医師
遠藤、田島剛、川上クミコ:藻奈美の同級生
相馬春樹:藻奈美の中学の1年上
吉本和子:隣に住む町内の情報屋
梶川幸広:事故を起こしたバスの運転手
梶川征子:幸広の妻
梶川逸美:幸広、征子の娘
根岸典子:梶川幸広の元妻
根岸文也:典子の息子、大学3年生
中尾達夫、拓朗:平介の同僚
小坂:平介の課の課長
藤崎和郎:双子の娘をバス事故で亡す
藤崎:被害者の会の弁護士
お言葉
「班長は長男。係長は父親。課長はじいさん。それより上なんかよくわからんから仏様だな」
「本当の父親は俺じゃないほうが幸せなのか、やっぱり父親は俺だってことにしたほうが幸せなのか、どっちだ」
昔デートしたとき、直子は昼間待合せてから夜別れるまで一度もトイレに行かなかった。親しくなってから尋ねたら、「我慢してたのよ」
なぜ我慢するのかには、「だって現実的すぎるでしょ」と答えた。