西崎憲編集『文学ムック たべるのがおそい vol.3』(2017年4月15日書肆侃侃房発行)というか、今村夏子の「白いセーター」を読んだ。
『こちらあみ子』を書いた超寡作作家の今村夏子の作品「白いセーター」が載っているというので読んだ。なにしろ、三島賞受賞のときに、これからの抱負を問われ、
「そういうのはないです。今後なにが書きたいとか、全然思わないです」 と答えた作家だ。
『文学ムック たべるのがおそい vol.1』にも、今村夏子は「あひる」を発表している。
小川洋子の「巻頭エッセイ」、特集「Retold漱石・鏡花・白秋」、短歌、その他の創作などが掲載されているのだが、パラパラ眺めただけなので、略。
ゆみ子は婚約者・伸樹さんから去年のクリスマスにプレゼントされた白いセーターを着て、クリスマスイブにお好み焼き屋へ行くのを楽しみにしていた。ところが伸樹の姉・ともかから頼まれて、クリスマスイブに4人の子供を預かることになってしまう。子供たちとトラブルが起こり、それを聞いた伸樹は機嫌が悪く、心がざわついたゆみ子は家を出る。結局、「ますだ」で伸樹と一緒になり、帰り道、ゆみ子が「離婚しますか」と聞くと、伸樹さんは「結婚しないと離婚できないよ」と言った。
私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)
とくに何もないといえば何もない小説だ。大きな出来事もなく、修羅場も登場しないし、哲学的な深い話も出てこない。大半の人はつまらないと思うだろう。
自分の世界をしっかり持っている作家である今村夏子の作品は、静かで普通の大人しい生活のなかで、何とも言えない寂寞感が漂い始め、どことなく心のざわつきが広がっていく。やがて、不器用な主人公は自分を追いつめていき、どこか歪んだ生き方に陥っていく。
ただ、本作品では、慎ましく、のんびりした夫婦の日常で、夫の伸樹のふところの豊さと、ゆみ子が夫を大好きなことで、歪みが広がらず、暖かさが残っているので救われる。