酒井順子『センス・オブ・シェイム 恥の感覚』(2019年8月5日文藝春秋発行)を読んだ。
宣伝文句は以下。
あの人といる時の居心地の悪さ。原因は「恥の感覚」の違いにあった!
食べ放題での「元取り」食い。「お母さんに感謝」からのハグ。ブックカバーをしないで本を読むこと。SNSでの手作り料理自慢……
本来恥ずかしがり屋だった日本人に、今、何が起こっているのか。
フェイスブックでの自慢バブルを斬った「中年とSNS」が大反響!!
共感の嵐を巻き起こす傑作エッセイ集。
「恥の感覚」
古来、日本には「自慢」を恥じ、嫌う文化があった。一方で井上ひさしはすべてのエッセイは自慢話である」と言った。皆がしたい、自慢。しかし、していることがばれると相当恥ずかしい。プロの文筆家は「一見、自慢っぽくないけれど、実は自慢」というテクニックを磨いてきた。
最近は自慢に対する感覚がかなり、違ってきたように思う。
「中年とSNS」
フェイスブックなどのSNSでは、アマチュアによるむきだしの「自慢」があふれ出す。そんな状況について書いた連載第2回の「中年とSNS」がオンラインに転載されるや、またたくまにシェアされ大反響を呼んだ。
「感謝にテレない世代」
現代の若い男子にとって、「マザコン」は揶揄(やゆ)されない。大学生の子供を持つ親はバブル世代で、「子供は貴重品」と意識している。
13頁にわたる部分が(文春オンライン)に『人前で大学4年生の息子が母親にハグ……もはや「マザコン」は恥ずかしくないのか』として特別公開されている。
「結婚相手」
誰が見ても百点満点の美人以外にも、八十点くらいの「そこそこ美人」、五十点くらいの「よくみりゃ美人」、三十点くらいの「通好み」など、カオ指数も様々なのです。
初出「オール読物」2017年4月号~2018年12月号
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お好みで)(最大は五つ星)
確かに我々昭和世代(乱暴な言い方だが)からみると、恥ずかしげもない若者の行為が近年見受けられる。YouTubeでの半分金目当ての、臆面もない話題作りや、人前での両親、とくに母親への親しみ表現などを見ると、確かにSNSの普及や少子化が大きく日本の恥の文化を変えてきているとの実感はある。
微妙な時代の変化をいち早く感じ取り、分析し、具体的身近な例を挙げて語る酒井さんの才能には恐れ入る。
ただし、2年近くに渡る雑誌への19編の連載エッセイなので、繰り返しも多く、パラパラ読む分には差し支えないが、全体を見直して感想をまとめようとすると、冗長な部分が多い。論文ではなく、エッセイ集なのでとくに問題とするほどではないのだが。