『マジェルカでお買い物』で一輪挿しを購入した時、カウンタの手前の台に晴雨兼用傘を置き、そのまま傘を置いて店を出てしまった。
数歩歩いた時、後ろから声がかかった。カウンターの女性でなく、店内にいた女性だろう、忘れた傘を持って駆け付けてくれたのだ。
私は間違いなくおじいさんだが、後ろ姿の見事なくびれを見て、晴れ上がった日の傘なので、当然女性と思ったのだろう。
「奥様! 傘を」と声がかかった。
振り返った私の玉三郎なみの顔を見て、ニコット微笑んだが、顔に生えた見事な髭に気づいて固まり、
「奥様! 傘を、‥ ‥ ‥」となった。
固まった女性から傘を奪うように受け取って、ありがとうの言葉を残して、玉三郎は去って行った。