貫井徳郎著『失踪症候群(新装版)』(双葉文庫ぬ1-04、2014年10月19日双葉社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
失踪した若者たちに共通点がある。その背後にあるものを燻り出すべく、警視庁人事二課の環敬吾は特殊任務チームのメンバーを招集する。私立探偵・原田征一郎、托鉢僧・武藤隆、肉体労働者・倉持真栄。三人のプロフェッショナルは、環の指令の下、警視庁が表立って動けない事件を、ときに超法規的手段を用いても解決に導く。失踪者の跡を追った末、ついにたどり着いた真実とは。悪党には必ずや鉄槌を下す―ノンストップ・エンターテインメント「症候群シリーズ」第1弾!
「症候群シリーズ」は(1)『失踪症候群』(2) 『誘拐症候群』、(3)『殺人症候群』
警視庁には、影の特殊工作チームが存在し、諸般の事情から警察組織が手を出しにくい事件を捜査し、犯人を社会的に抹殺する。警務部人事二課の環敬吾が指令を送るのは、私立探偵・原田征一郎、托鉢僧・武藤隆、肉体労働者・倉持真栄のプロフェッショナルなメンバー3人。
数年間の若者の失踪事件にかすかに共通点が見られる。捜査一課として動くわけにはいかないので、環のチームに背後にあるものを探る仕事が依頼され、チームは一覧ファイルを元に行動を開始する。
原田が担当した小沼豊を、大学で入っていたロックバンドから、ライブハウス、セミプロバンド「ゼック」と辿っていく。また引越しをくり返す住民票をたどって行ったが、結局戸籍の附票から判明した現住所には吉住計志が住んでいた。
チームの倉持の担当した広沢良美も住民票を次々と移していて、現住所には失踪者の一人の山口早希代が住んでいた。武藤が調査した泉直雅の現住所には失踪者の一人の村山繁朗が住んでいた。
環(たまき)敬吾:警視庁警務部人事二課。特殊工作チームのリーダー。30代後半。浅黒く顔は堀が深くモデル体型。常に冷静で必要最低限のことしか言わない。
原田柾一郎:特殊工作チームの一員。表の生業は私立探偵。妻は雅恵。娘は高校生の真梨子。
武藤隆:特殊工作チームの一員。表の生業は托鉢僧。元警察勤務。
倉持真栄(まさはえ):特殊工作チームの一員。表の生業は肉体労働。190㎝近い大男。
小沼豊:北海道から上京し、アパートを親に知らせずに引越して失踪した。
吉住計志:コンビニでアルバイトし、ゲームにはまっている。
馬橋庸雄:大手不動産会社・新興エステートの社員。
バンド「ゼック」メンバー:リーダー田中文昭、ビビりの村木了、ボーカルで女性に人気だが酷薄な羽田陽介、狂暴な長谷宏冶、ドラムの池上昇平
本書は1998年3月に双葉社より刊行された作品の新装版。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
まあまあ面白いという所か。失踪者とその関係者が多いので覚えられない。
そもそも、他人と互いに入れ替わるという話で、その目的が親から逃れるためというしょぼいものなので、迫力不足。失踪者のうちの一人が殺されたことで、ようやく極悪人たちの登場となる。
リーダーの環敬吾は頭脳明晰で、底を見せず、倉持は単純明快な武闘派で、いずれも只者ではない雰囲気を漂わせて興味を引く。この本では武藤の出番はほとんどないが、底知れない感じがある。しかし、もっとも多く登場し、その家庭のトラブルまで描かれる原田は、特に強くもなく、特技もなさそうなただ普通のおっさんで、面白味がない。なぜチームの一員に選ばれたのか疑問だ。