角田光代著『夜かかる虹』(講談社文庫か88、2004年11月5日講談社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
ひとり暮らしの私を突然男連れで訪ね、男を置いて帰ってしまった妹リカコ。外見はそっくりで性格は正反対、甘い声で喋り、男に囲まれ、私を慕いながら、一方で恋人まで奪おうとする妹。痛くて切ない姉妹関係をリアルに描く表題作をはじめ、人とのつながり、自分の居場所を誠実に問う作品集。(『草の巣』を改題)
「夜かかる虹」と「草の巣」の2つの短編集
「夜かかる虹」
遠野フキは短大を出て就職すると、実家を出た。フキには3歳下の妹・リカコがいて、よく似ているのに何かが決定的に違っていた。フキは人付き合いが苦手だが、妹は誰にでもすぐなれなれしくできるのだ。フキの部屋に北村修平が来ているときに突然リカコがやって来て、屈託なく修平に話しかける。
リカコが生まれてから大事にされなくなったフキはよく隠れてリカコをいじめた。大きくなるとリカコはフキの物をなんでも欲しがるようになった。いや、物だけではなかった。……
「草の巣」
私は、井坂サヨ、矢部かおり母娘が経営する昼は定食、夜は飲み屋になる店で働いていて、仲野と同居している。ときおり店に飲みに来る村田は、俺が作っている家を見たいなら日曜の二時に駅前のロータリーに来な、と言った。すっかり忘れていた私は買物に出て、駅前で村田の車に乗ってしまった。無口な村田は何も語らず私を乗せてただただ走り、わけのわからない男・榎本が同乗し、さびれた店を回り、ラブホテルに泊まり、山の中の草地に家具が置いてある草の巣に連れて行く。
初出:夜かかる虹「群像」1994年11月号、草の巣「群像」1997年6月号
単行本:1998年1月講談社より『草の巣』として刊行。文庫化にあたり改題。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの? 最大は五つ星)
角田さんが純文学指向だった27歳のとき(現在54歳)に書いた小説。
「夜かかる虹」は、「ひでえ妹だ」と思って読んでいくと、姉も同じだと思えてくる。それでも互いに絶交するわけでもなく、やはり姉妹なのだなと思う。まあ、気持ちの良い小説じゃないね。
「草の巣」は、何しようとしてるのか、何考えてるのか、分からないままどんどん進んでゆく。それでも結局、読んでしまうのは? 若いときから角田さんには筆力があった?
「木更津」の由来は、君去らず(p128)。古事記の「きみさらず伝説」にあるという説がある。私は、歌舞伎「切られ与三郎」を思い出すのだが。