夏川草介著『本を守ろうとする猫の話』(小学館文庫な13-5、2022年9月11日小学館発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
夏木林太郎は、一介の高校生である。幼い頃に両親が離婚し、小学校に上がる頃から祖父との二人暮らしだ。祖父は町の片隅で「夏木書店」という小さな古書店を営んでいる。その祖父が突然亡くなった。面識のなかった叔母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、店の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。トラネコは、本を守るために林太郎の力を借りたいのだという。林太郎は、書棚の奥から本をめぐる迷宮に入り込む――。
アメリカ、イギリス、フランスをはじめ世界三十五ヵ国以上で翻訳出版された記録的ロングセラー、待ちに待たれた文庫化!
猫の先導で書店の奥に現れる第一の迷宮「閉じ込める者」の中に入る。そこで、解決する課題は「閉じ込めているたくさんの本を助け出すこと」。
第二の迷宮「切りきざむ者」では「本のエキスを抽出して要約だけを残して読書の効率を上げるために、世界中の本を切り刻んでいる男をとめること」。
第三の迷宮「売りさばく者」での課題は?
最後の迷宮の課題は? 林太郎の答えは?
本書は、2017年2月に小学館より単行本として刊行。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
迷宮に入り込むというファンタジーで、かつ、なぜ本が好きか、なぜ本を読むのかと言う概念的答えを要求する問答がなされる。ファンタジーにも、哲学的問答にも興味のない私には深く入り込めない小説だった。
問答は、いわゆる禅問答で、私にはぼんやりと理解できるだけで、疑問だらけで、質問したい事がやまほど生じてしまう。というか、追及する気にもなれない。
ただし、やたら読みやすい、楽しめる本だけを読んでいる自分は、本に何を求めているのかを改めて考える機会にはなった。
祖父の化身と思われる猫も、ガールフレンドの柚木沙夜にも、ほとんど活躍の場がない。学年主席の秋葉先輩に至っては、結局出番さえない。何も考えていないように見える林太郎だけが、強敵が恐れ入る一言を突然発言し、解決してしまう。
蛇足:『走れメロス』の要約がたった「メロスは激怒した」だけというのはいくら何でもやりすぎだろう。p104