監修:小岩正樹、文:大浦春堂『東京 いちどは訪れたいお寺の名建築』(2019年4月24日エクスナレッジ発行)を読んだ。
お参りだけではもったいない!
たてもの観賞しても楽しい東京のお寺30選
木の表情、ステンドグラス、彫り物など、
お寺にはたてものの細部を観賞しても楽しい要素がたくさんあります。
本書では東京都内のお寺30軒を、建築的要素に触れながら、
全編撮り下ろし写真の美しいビジュアルで紹介しています。
今度のお休みは、お寺でお参りをした後、
ゆっくりとたてものの佇まいも楽しんでみてはいかがでしょうか?
東京の30の寺院を写真+説明文で紹介している。
まえがき、あとがきなど出版の趣旨、選択の理由などを説明する文もなく、ただただ各寺院を紹介する153頁の写真集。
浄土真宗本願寺派 築地本願寺
古代インド風の石造り、伊藤忠太こだわりの動物や幻獣が至る所にいる本堂。重要文化財。
鬼子母神堂
インド神話で訶梨帝母(かりていも)(鬼子母神)は多くの子供を持っていたが、近隣の幼児を食べてしまう夜叉だった。お釈迦は末の子を隠し、嘆き悲しむ訶梨帝母に父母の嘆きを教え諭した。訶梨帝母は、安産・子育の神となることを誓った。
吉祥寺
1657年の明暦の大火で全焼し、現在の駒込に移転。門前の住人の多くは現在の武蔵野市吉祥寺へ移り、吉祥寺村となった。境内には榎本武揚、二宮尊徳の墓、八百屋お七・吉三郎比翼塚がある。
護国寺
1681年徳川五代将軍・綱吉の生母・桂昌院の発願で創建。都内最大級の伽藍。富士塚・音羽富士がある。
豪徳寺
井伊家代々の墓があり、国指定史跡。願いが叶い、返納された招き猫がずらりと並ぶ。
萬松山 泉岳寺
1641年の寛永の大火で高輪に移転。この時、尽力した5大名の一つ浅野家は江戸の菩提寺とした。赤穂浪士の墓がある。
増上寺
1393年開山。徳川家の菩提寺で、2代秀忠、6代家宣、7代家継、9代家重、12代家慶、14代家茂の墓所がある。16000坪の広大な境内には三解脱門などの堂宇が並ぶ。
池上本門寺
日蓮上人が61歳で亡くなった場所。表参道96段の石段は加藤清正寄進。関東最古の五重塔。桜の名所。
経栄山 題経寺(柴又帝釈天)
「男はつらいよ」の舞台。池泉式庭園「邃(すい)渓園」が1965年完成。
浅草寺
飛鳥時代の開創。年間3千万人の参拝者。本堂の天井画は川端龍子と堂本印象。
不忍池 辨天堂
寛永年間に天海大僧正が、不忍池を琵琶湖に、小さな島を拡張して竹生島に、宝厳寺に見立てて、辨天堂を建立。
塩船観音寺
「花の寺」として知られ、ゴールデンウイークにはツツジが見頃。JR青梅線「河辺」駅からバスで「塩船観音入口」下車徒歩10分。(青梅線+バスって、ちょっと遠く、覚悟が必要)
深大寺
満功上人の父・福満と豪族の美しい娘が恋に落ちたが、娘の両親の反対にあい、娘は湖の小島に隔離された。福満が深沙(じんじゃ)大王に祈願し、霊亀が現れて島に渡ることができた。生まれた満功上人が創建したのが深大寺。ということで、縁結びの信仰を集めている。だるま市、参道の蕎麦屋が有名。三鷹・吉祥寺・調布・つつじヶ丘からバス。
北側にある神代(じんだい)植物公園を観てから、南の深大寺門から徒歩0分で深大寺を訪れるのがお勧め。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
とくに東京近辺に住んでいる人は、ほぼ知っているつもりになっているお寺ばかりだ。しかし、この本を眺めているだけで、由来・建物の細部・仏像など見逃していた事柄に気が付くだろう。また、近所に意外なお寺があることに気が付くかもしれない。そんな人は、この本を、写真だけでもパラパラ見ることをお勧めします。
この本で紹介している寺院
1章:西エリア(16寺)
浄土真宗本願寺派 築地本願寺、鬼子母神堂、吉祥寺、九品佛浄眞寺、護国寺、豪徳寺、
常照院、萬松山 泉岳寺、増上寺、池上本門寺、豊川稲荷東京別院、堀之内妙法寺、妙定院、
目黒不動尊瀧泉寺、亮朝院、圓融寺
2章:東エリア(9寺)
諸宗山 回向院、寛永寺根本中堂、弘福寺、経栄山 題経寺(柴又帝釈天)、深川不動尊、
清水観音堂、西新井大師、浅草寺、不忍弁天堂
3章:市部エリア(5寺)
塩船観音寺、高幡不動尊金剛寺、髙尾山薬王院、深大寺、廣園寺
【監修】小岩正樹(こいわ・まさき)
1977年神奈川県生まれ。早稲田大学理工学術院准教授。博士(工学)。専門は建築史、文化遺産学。
著書、『日本近代建築大全<東日本篇>』(共著、講談社)、『日本都市史・建築史事典』(共著、丸善出版)など。
【文】大浦春堂(おおうら・しゅんどう)
編集者、トラベルライター。おもに社寺参りに関する記事を雑誌やWEBマガジンに寄稿。
著書、『御朱印と御朱印帳で旅する全国の神社とお寺』(マイナビ出版)、『神様とつながる暮らし方』(彩図社)、『神様が宿る御神酒』(神宮館)、『神社とお寺 おいしいお詣りスイーツ』(講談社)。