凪良ゆう著『星を編む』(2023年11月6日講談社発行)を読んだ。
☆2023年本屋大賞受賞作 シリーズ最新作☆
第20回本屋大賞受賞作『汝、星のごとく』続編
花火のように煌めいて、
届かぬ星を見上げて、
海のように見守って、
いつでもそこには愛があった。
ああ、そうか。
わたしたちは幸せだった
のかもしれないね。
『汝、星のごとく』で語りきれなかった愛の物語
「春に翔ぶ」--瀬戸内の島で出会った櫂と暁海。二人を支える教師・北原が秘めた過去。彼が病院で話しかけられた教え子の菜々が抱えていた問題とは?
「星を編む」--才能という名の星を輝かせるために、魂を燃やす編集者たちの物語。漫画原作者・作家となった櫂を担当した編集者二人が繋いだもの。
「波を渡る」--花火のように煌めく時間を経て、愛の果てにも暁海の人生は続いていく。『汝、星のごとく』の先に描かれる、繋がる未来と新たな愛の形。
前作「汝、星のごとく」では、
瀬戸内の小さな島で、高校生の櫂と暁海(あきみ)は出会う。櫂は投稿サイトで久住尚人と知り合い、編集者の植木に導かれて漫画作成の力をつけていく。
やがて二人は島と東京に別れ、そらぞれが別のパートナーと付合い、それでも……。
そんな櫂と暁海の、30歳を超えるまでの姿を描くのが前作だ。
「春に翔ぶ」
北原草介: 26歳~。大学院を辞めて高校教師になっていたが、幼子・結(ゆう)を引き取って育てるために、死んだ母の実家のある瀬戸内の島へ移る。限りなく善人の父親は入院中。
明日見菜々:明日見総合病院の一人娘。北原の生徒の高校1年。両親には秘密で、敦と付合っている。体調不良。
片山敦:スノーボード・ハープパイプの世界クラスの選手。
「星を編む」
青埜櫂:漫画原作者・小説家。作画の久住尚人とのコンビで漫画がヒットしたが、尚人のスキャンダルで絶版。その後、病死。
植木:柊(しゅう)光社の漫画編集長。櫂の残したプロットノートを元に、5年前に引退した小野寺さとるに作画させて漫画完結編の出版を企画。家庭を顧みない仕事ぶりで妻には見放され気味。
二階堂絵里:薫風館の編集者。櫂の買い残した小説の出版を企画。超多忙を支えてくれている夫・裕一は子供が欲しい。
「波を渡る」
北原草介も52歳になり、育ててきた結がノアと結婚する。明日見菜々と北原、暁海と櫂、その関係の上に築かれた北見と暁海の関係が、落ち着いた、よかげなものに思えた。
わたし(暁海)にとって櫂は煌めく火花だった、そして北原先生は海だった。……
いつかわたしの命が尽きるときがきても、この海に還るのならば怖くない。燃え尽きて、煌めきながら海へと還っていく幾千の光の行く先を、わたしは見つめ続ける。
と終わる。
初出:「小説現代」2022年10月号~2023年11月号
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
前作「汝、星のごとく」を読んでから本作を読むと、各人の人生の流れがわかり、面白いだろう。逆に、今作から読み始めると、深みがなくなり、不審を持って読み進めることになる。たとえば暁海がいきなり何か重要な人物として登場してきて、説明がないので落ち着かない。
大河小説を分割した二つの物語にしたようなもの。
「星を編む」での生きがいをもって仕事に邁進する二階堂絵里が面白かったのに、理解して支える夫・裕一は結局のところ子供がいない結婚は考えられなかったというのは、なんともいやはや。
男社会で戦闘的に戦う二階堂絵里は語る。「頭を下げることも度量の大きさのひとつって受け止めてもらえる男の人とちがって、女は頭を下げたら舐められるの。それからずっと下に見られる。」
夕星:ゆうつづ。古くはゆうづつ。西の空に上がる宵の明星