知念実希人著『螺旋の手術室』(新潮文庫ち7-71、2017年10月1日新潮社発行)
裏表紙にはこうある。
純正会医科大学附属病院の教授選の候補だった冴木真也准教授が、手術中に不可解な死を遂げた。彼と教授の座を争っていた医師もまた、暴漢に襲われ殺害される。二つの死の繋がりとは。大学を探っていた探偵が遺した謎の言葉の意味は。 父・真也の死に疑問を感じた裕也は、同じ医師として調査を始めるが……。「完全犯罪」に潜む医師の苦悩を描く、慟哭の医療ミステリー。『ブラッドライン』改題。
冴木裕也:純正会医科大学附属病院の
冴木真也:同・第一外科・准教授。次期教授候補。裕也の父。
海老沢教授:同・第一外科・教授。真也の手術を担当。
清水雅美:同・准教授、麻酔科医
馬淵公平:光零医大客員教授。次期教授候補。殺される。
川奈淳:帝都大・准教授。次期教授候補。47歳。妻は茜(旧姓梅山)。
冴木真奈美:父は真也、母も医師で優子。裕也は兄。
岡崎浩一:真奈美の婚約者。母は結婚に反対の登喜子。
桜井公康:警視庁捜査一課・巡査部長。相棒は板橋署の真喜志(まきし)。
松本(増本)達夫:フリージャーナリスト
この作品は2013年7月新潮社より『ブラッドライン』として刊行。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
最初の手術シーンはリアルで、読んでいるだけでハラハラしてしまう。
話の筋はそれほど複雑ではないのに犯人のあたりがなかなかつかない。その意味では面白いのだが、最後まで読むと、ちょっと無理筋じゃないかとも思う。
読後感をこれほど無常なものにしなくてはいけなかったのだろうか。
他の作品でもよくあることだが、主人公が警察に情報提供せずに、自身で危険な行動をする。そして、そうする理由が薄弱で、小説だからと納得するしかない。
2004年から始まった初期研修必須化により、研修医は全国的に行われるマッチングというシステムによって、自らが希望する初期研修病院に割り振られるようになった。それにより引き起こされたのが、急速な『医局離れ』だった。
大学病院っから市中病院に大量の研修医が流出し、そのまま市中病院に居着くようになったため、それまで圧倒的なマンパワーを背景に、医師を派遣することで市中病院を支配していた医局がその力を失っていった。いまや医局に減私奉公し、助手、講師、准教授、そして教授へと駆け上がるという人生プランは、若い医者にとって魅力的な将来像ではなくなりつつある。(p103)
躊躇(ちゅうちょ)