未来予測は頭の体操
3年前にブログを始めて以来年末に文字通り独断的「大胆占い」と言い訳しながら、主に経済指標を中心に予測してきた。起こったことを四の五の能書きを垂れるのに比べ、起こったことを理解して未来を予測することは数倍難しく頭の体操になる。
私のような会社勤めしか経験のない人間にとって、世の中の事件を色々な角度から見て多数の意見を集約しその中で自分の考えを整理するのは一仕事だが、ブログに公表することによって自分を追い込み集中することが出来る。平たく言うと老化防止だ。
大外れの中国経済予測
所詮は受け売りの意見だが、それでも多くの評論の中からこれが本質を言い表しているという私の判断はまずまず正しかったと思う。しかし中国経済の予測だけは連続して言い訳出来ないほど大外れだった。
中国政府の経済成長目標、経済過熱抑制政策、アナリストの分析、資産バブル、汚職蔓延・環境汚染・農民の反乱・言論検閲など経済にとってマイナスの報道を総合して政府の計画プラスアルファー程度の予測をしたが、結果は毎年予測を大幅に上回る経済成長が達成された。
計画を大きく上回った経済成長
実際今年は政府計画が7.5%の経済成長に対し私は8.5%を予測したが、第2四半期(11.9%)を終った時点で上半期10.9%成長を記録した。更に6月には鉱工業生産が19.5%の記録的成長が景気加熱のサインとして注目されている。
固定投資は上期前期比31.3%と驚異的な伸び、小売売り上げは同13.3%と着実に伸びている。過剰設備や利益の減少・政策的指令などの圧力にも拘わらず、低コストの資本調達が可能なことが引き続き設備投資の下支えとなり、それが小売売り上げにも寄与した。
上部構造の問題
中国人民銀行は先月金利と預金準備率引き上げを実施したが、これらの政策措置では中国の景気過熱を十分に抑制できないと見られている。最近リリースされた経済指標は景気過熱が抑制されておらず、もっと強力な金融引き締めが必要なことを示した。
しかし、モルガン・スタンレーの報告によると金融政策がより厳しく改変される可能性は極めて低い。その理由は急激な融資削減が失業者増加のリスクを高め、社会情勢の安定を最優先してきた中国の指導部にとって受け入れ難いからである。
技術的な問題
日本に比べ地方政府の自由度が高く中央の計画通りにことが運ばない。経済活動の原資として地方政府の外資優遇措置が海外から継続的投資を呼び、中央は投資抑制の為金利を上げても成長のための資金(しかも低コスト)は途切れない。更に最近は資本蓄積が進み国内資本の再投資サイクルが回り始めた。
適切で効果のある措置が取れない原因の一つは、中央政府が経済活動を正確に補足出来てないことにある。国内市場が育ち活性化している飲食・サービス産業などは、共産主義国体制下で国営化された計画生産とは馴染みがなく、補足率が低い為でもある。
経済構造の変貌が生むリスク
中国経済は数年前まで従来の計画経済の延長線上にあったが、現在は資本主義経済と変わらない構造に変化した。経済活動の規制緩和は日本より進んでいるし、農民の土地問題を除けば私有財産も殆ど差が無い。政治的な言論の自由にはいまだ制限があるが、数年前に比べると遥かに自由に物が言えるようだ。
明らかに問題は急成長が停滞し始めた時だ。何度も危機的と噂された巨額の不良債権を今までは経済成長で帳消しにするサイクルが上手く機能していた。しかし成長が止まった瞬間にとてつもなく大きな不良債権が国中の経済活動を麻痺させる恐れがある。
外資優遇措置の見直し機運
昨日付けのサムスン経済研究所報告によると中国政府は最近外資系企業に対し優遇措置(税減免)の縮小、反独占法の制定、労使関係の監督強化、技術移転を迫り外資融資条件を変更した。この政策は外資排斥ではなくむしろ市場経済体制の維持強化というべきものだ。
しかし市場経済下で自律的な経済活動が進めば進むほど、経済活動をきちんと捕捉し変化を読み取り、状況に応じて金利などの適切な経済措置をとらないとバブルがはじけた後では手遅れになる。
中国は特別か?
今まで不良債権や資産バブルなどの報告を見て何度も中国経済崩壊のリスクの前触れかと私は恐れた。汚職や農民反乱の多発も13億の民が起こした比率で考えればそれ程酷くは無いのかもしれない。何時か崩壊するといわれながら比率で見るとリスクが薄められる。
しかし、中国は普通の自由な資本主義国に近づくほど特有の脆弱さが増すとも考えられる。中国には98年のアジア危機が起こる可能性は依然ない。為替システムが異なるからだ。しかし経済システムの違いは殆どなくなった。私は、中国政府はもっと強力な処方箋を早急に書くべきと考える。そうすれば「大胆占い」に近づくのだが。■