会社勤めを止めた理由の一つは思いついた時いつでも山歩きをしたかった為だ。登山というほど本格的ではない、山登りの専門的な訓練を受けた者しか行けないようなコースを登ることは無い。しかし、山歩きを楽しむ為には重い荷物を背負うことは厭わなかった。今迄に行ったお気に入りのハイキングコースを紹介する。
次点 白馬岳-唐松岳
私が山歩きの楽しみを知ったのは、まだ20代の後半だった頃会社の同僚に誘われて北アルプスに行った時からだ。組合のストライキで突然の休暇となった9月の第1週目、新宿から夜行で白馬に行き山小屋を利用しながら白馬尻から白馬岳、唐松岳、八方尾根を下った。
雪渓を上り美しいお花畑に出合い、遠くに名山を見ながら岩道を歩き、足を滑らすと300mも転落しそうなキレットのスリルを味わった。それ以来日帰りで奥多摩や丹沢の山歩きを楽しんだ。時間があれば足を伸ばして奥秩父や南アルプス、尾瀬などにも行ったが寝返りすらママならない山小屋に泊まるのがどうしても好きになれず、その内近場の高尾山以外行かなくなった。
第1位 レニア山(米国)
米国単身赴任時は週末になると他にすることも無くテントを持って山に行くようになった。幸いにも赴任したワシントン州は3つの国立公園があり、特にレニア山とオリンピック(ONP)はよく行った。レニア山は富士山を一回り大きくした形のいい堂々とした山で、車中や登山口、登山道の何処からでも山頂がよく見え何度行っても楽しく歩けた。
レニア山は4000m以上の標高で富士山よりずっと裾野が広く何十ものハイキングコースがあり、どこから歩いても形のいい山頂が見えた。深い森を抜けると堂々とした白い頂が現れ何度行っても感激する。ガイドブックに載っているコースの半分近くカバーしたのは我ながら驚く。
次点 オゼッテ・ループ(米国)
オリンピック半島最西端の太平洋に面する海岸線を歩くコースで、シアトルからだと高速道路を使っても4時間程度かかるので早朝まだ暗いうちに出掛けないと日帰りできない。汐が満ちている時は海岸線の道がなくなるので、汐の満ち干を事前に調べていく必要がある。
オゼッテ湖につくと地の果てに来た気がする。海岸に出ると砂浜が真っ黒になる虫(多分季節による)に閉口しながら歩き始める。太平洋の荒々しい波が引いたタイミングを図って巨大な流木の上や岩を恐々と、しかし急いで渡っていく。会社の同僚夫妻と一緒に行った楽しく忘れがたいコースだ。
ONPは本当に興味深いところだった。高い緯度で森林限界が5000フィートの地形に太平洋からの湿気を帯びた風が吹き付け複雑な気候を生んだ。その気候毎に雨林、低地、山岳、亜アルパイン、アルパインの5つの領域に分類され、多様な動植物が住む。平たく言うと温帯雨林から氷河まで存在するのだ。夫々の領域に到達するハイキングコースがあり、とてもユニークな国立公園である。馬のように大きな鹿(エルク)や可愛いマーモット、近年狼が放たれ話題になったところでもある。
次点 南カスケード(米国)
レニア山の南東の方向に比較的なだらかで山歩きに適した美しい山々と川がある。中でもヤキマ方面410号線途中から登り始めるAIX山(発音不明)は標高2400m弱ながら、頂上からの展望だけをとるなら周りに高い山が無く360度展望が開けノースウェストの有名な山が全て見え最高だ。
ここは国有林で98年当時登山許可証を3ドルで購入した。国立公園は1週間/1年間の入園許可と全米国立公園1年間の入園許可があった。当時5-6ドルから20ドル程度だった記憶があるが、その後政府補助が削られ値上がりしたと聞いた。一方国有林にはハイカーは殆どいない。AIX山は道中日陰が少なく夏は最低2リットルの水の補給が必須。■