一川防衛相のクビが危ない。防衛相辞任問題がメディアを賑わしている。28日に不適切発言を理由に沖縄防衛局長を更迭したと伝えられた。検査入院が終り退院してくると、事態は一川防衛相の辞任に発展していた。
元々沖縄防衛局長が取り巻きの記者と酒の席でした「犯す」発言が地方新聞に載り、これにマスコミが飛びつき大騒ぎになった。防衛相が国会答弁で詳細を知らないと応えて、今度は大臣に火の粉が飛んだ。問責決議案が参院に提出される前に辞任すべきと言う声が党内外にあがっているという。
参院は少数与党なので問責決議案が提出されれば決定的となる。この先の道筋は、重要政策審議を人質に取られ辞任に追い込まれる一本道だ。私が新聞テレビやネットを見た限りでは、この状況を異常だと声を上げるジャーナリストが極めて少ないように私は感じる。
又か、もううんざりと私は感じる。誰に対してかと言うと、局長や防衛相もさることながら永田町とマスコミだ。先に辞任に追い込まれた鉢呂経産相とよく似たパターンだ。ハイエナのように言葉狩りをする三流記者を前に、お友達と安心しきった高官が不用意な発言をして餌食になる。
そもそも記者が高官と酒席に同席し軽口を交換するような関係になること事態、私には双方の倫理観に強い疑問を持つ。記者は仮に酒席など非公式な席で疑わしい情報を得たら、キチンと裏を取って複数の根拠に基づく報道をするのが基本のはずだ。今回はワナにかけられたようなものだ。田原総一郎氏によれば、記事にならない場合には週刊誌に情報を売るという。ハイエナだ。
私から見れば、メディアは自分の首を絞めているように思う。政局以外に何も生み出さない言葉狩りで政治が劣化するのをメディアが助長している。これでは政治家や政府高官は自分の身を守る為にオフレコに応じなくなり、真に重要な政治マターの背景や本音情報が取れなくなる。
以前中川大臣が取り巻き記者と酒を飲んだ後酩酊会見をやり、最後に命を絶つ悲劇が起こった。これなど個人の悲劇ではなく国家の悲劇だ。その時メディアも責任の一端を負うべき事件だったと今も思っている。取り巻きに囲まれてちやほやされて自分を失った政治家や高官も情けない。だが、言葉尻を捉えられて更迭や辞任に追い込まれ国政が停滞して誰が利益を得るのか。
自民党を始め野党がこの騒動から政治的利益を得ようとしている。だが、それは党利党略というものだ。決して国民の為ではない。TPP論議にしろ、年金や消費税の政策にしろ、自党が姿勢を明らかにせず与党の意見の不一致を非難して一体何が国民の為になるのか。
戦前は日中戦争辺りから排外的・反米的記事など戦争を商品化して発行部数を伸ばし今日の大新聞が生まれたという。今その同じ新聞・テレビは政局を商品化し購読数や視聴率をあげようとしている。何故日本のメインジャーナリズムにこの醜悪な体質が残っているのか。
ナチに協力した独仏の新聞人は永久追放されたが、戦争協力した日本ジャーナリストは残った。この辺りに残された体質の問題があるのかもしれない。結局のところ野党の党利党略やメディアの体質は国民の無言の支持を受けている。この三流芝居を見て何も感じないのは国民だ。民意が反映された結果であり、民主主義的結末だと思えば我慢するしかない、のかもしれない。■