北朝鮮の独裁者金正日が二日前に移動中の列車内で死んだというニュース速報が突然流れてきた。母を見舞った後、帰京の挨拶を兼ねて友人と昼食中だった。死因は過労による心筋梗塞で69歳だったという。持病の糖尿病があり2008年に脳梗塞を起こしたが、その後回復して精力的に地方回りをしていたというから、多くの人達にとっては唐突だった。
これを聞いて、母が長く糖尿病を患い一昨年脳梗塞になり3ヶ月入院、リハビリを半年続けた後現在の介護付き養老施設に入居した経過が浮かんできた。彼はもっと若いし具体的な症状も分からないが、脳梗塞の原因となった糖尿病の怖さを改めて感じた。
過労というのは、ここ数年で後継者を決め外交と地方廻りを進めた無理がたたったのだという。死を意識した独裁者が死後の世界にも影響を及ぼそうと、最後の力を振り絞っている様子が目に浮かんだ。これを聞いて残された時間が少ないと覚悟した独裁者の気持ちがある程度わかったような気がした。というのも、私も高齢化の時計が進み時間が余り残ってないと感じたからだ。
私のガン騒動は検査結果悪性と判断されず時間の猶予をもらった(多分)が、その間残された人達の為に何を残し伝えたいか私も真剣に考えた。先祖が残し伝えてきたものをキチンと記録して子供達に伝える責任が私にはあると思った。それをどうするかは彼等の判断だ。だが、少なくともこうして欲しいという私の希望も明らかにしておきたかった。
実はまだ整理できてないものがある。それは私と母のどちらが先に逝くか、それによって残された人がすべきことをリストしておくことだ。現状を除き3つのケースを考えた。1)私が治療の為機能しなくなった場合の母と実家のケア、2)その状況下で母が死んだ場合の対応、3)私が母より先に死んだ場合の母と実家及び自宅のケアである。
どう考えても死ぬ順序を間違えると残された者が大変だ。実は私の祖父は20代半ば、父は定年前の50代半ばで死んで親が葬式を出した。そして寡婦となった祖母と母が実家を守ってきた。何時の頃か私は母より先に死ぬ親不孝だけは絶対すまいと決意した。しかし、10月末にガンの疑いが極めて濃厚と宣告された時は、もしかしたら3代続けて親不孝をするかもしれないと恐れた。
「やりたい事はすべてやった、何の後悔も無い」と淡々と語る義母ほど私は悟りを開いた訳では無い。だが、私も今まで色々な経験をしてきたし、この先起こるだろう最悪ケースを考え覚悟もして何でも受け入れる気持ちになっていた(いざとなればどうなるか分からないが)。だが、母より先に逝くのだけは避けたかった。仮にそうなれば、母には伝えて欲しくないと思っていた。
まだ疑いは残るものの医者から生検の結果が良性だと聞き、それ以来上記3つのケースの検討が進まなくなった。それより帰京後に予定しているポットラック・パーティや年末年始の旅行のことのほうが気になってきた。落ち着いたところで、上記のケース・スタディを再開する積りだ。■