かぶれの世界(新)

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ドイツのジレンマ

2015-07-06 07:19:26 | ニュース
今朝目が覚めるとギリシャの国民投票は既に決着していた。事前の予想に反しギリシャ国民はEUの金融支援が求める緊縮策を圧倒的多数で反対した。チプラス首相はこの国民の意思をもとにEUとの交渉に再び臨むとされている。しかし、ドイツを始めとするEUの反発は必至であり、先行き全く見通しが立たない状況だ。今後の成り行きはドイツ次第であるが、予想外にドイツは新しい役割を演じるだろうと以下に論じる。

欧州危機からウクライナ紛争、現在のギリシャ危機までこの数年ドイツの存在感が急速に高まっている。私は2013年12月に「ドイツが絶対にギリシャを救済しなければならない理由」と題して、ドイツが統一通貨導入と自由化した欧州市場で最大の利益を得た。更にギリシャや南欧の財政危機で域外通貨に対してユーロ安になり域外貿易の競争力を高め、他の国が停滞を続ける中でEUで一人勝ちになっていると書いた。

それから1年半経過したが、曲がりなりにも2本柱だったフランスは思い切った経済改革を躊躇っている間に、ドイツは突っ走り成長を続け今やフランスを差し置いて盟主と言われるようになった。必ずしもドイツが意図して望んだ訳ではないと思うが。注目すべきはこの1年半の間にドイツは用心深くEU諸国の顔色を確認しながら、経済力に見合った政治的責任を果たし始めたことだ。

ウクライナ紛争ではメルケル首相がプーチン大統領と直談判し、今回は強硬派の後ろでギリシャのEU離脱を防ぐ側に回っている。以前ほど目立ってない、最早強硬派ではないのだ。明らかに自国の利益を強く打ち出すより地域や世界全体の利益を考えた動きに変わった印象を受ける。ドイツは新しい責任を果たそうとしているのを隠さなくなった様に感じる。ドイツの変身は経済力が世界第2位になっても世界の中で責任を果たそうとしない日本と対照的だ。

気を付けなければならないのはドイツがEU内で突出して一人勝ちになったことで、他国の嫉妬をかっている節があることだ(政府間のやり取りではあり得ないが、自由に物が言える民間人にそういう気配があると私は思う)。一方で、ドイツはもっと政治力を発揮して危機回避に責任を果たせという意見もあるらしい。ドイツと米国の関係が時に微妙なズレを感じる時もある。興味深い現象だ。

実はそれこそドイツが盟主と見做されるようになった証左と私は考える。リーダー故に「やり過ぎ」と言われたり、「もっとやれ」と言われたりする。今迄その役割は米国一国のみが背負って、時に頼られ時に批判されてきた。残念ながらドイツはかつての米国みたいに政治経済軍事ともに圧倒的な力を持たない「半覇権国」であり、やれることは限られている。ドイツ国民はこの微妙な国際世論をどう感じているのだろうか。

昨日の日本経済新聞のコラム「中外時評」はそのへんのところをドイツのジレンマだと指摘していた。確かにそうかも知れないが、それでも私は羨ましいジレンマだと思う。それに比べると日本は我が身の可愛さだけで身内の争いを続け、政治もマスコミも若者から老人まで世界に貢献しようという姿勢の感じられない人達のなんと多い事か。ドイツレベルの悩みより、ギリシャレベルの悩みの方が似合ってる?かも。本論に戻ると最終的にドイツ主導で一見妥協と見える巧妙なギリシャの安楽死を求めていくことになると私は予想する。それが新しいドイツの役割と思う。■
コメント
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