かぶれの世界(新)

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往く人来る人(2)

2016-05-23 19:14:25 | 健康・病気
「やはりそうだったか」 
施設の打合せ室で母の担当医が一言二言話を始めて直ぐに何のことか分かった。いよいよ母の「終末医療」について話を聞く時が来たと分かった。

施設の母を見舞って実家に戻った1週間前の夜、施設から電話があり母の担当医との打合せの日取りを決めた。4月に四国の実家に戻り定期的に母の見舞いを再開して直ぐ、母の容態が劣化したことに気付いた。言葉は悪いがいわゆる「老醜」の度合いが進み、母との会話は私が話すだけの一方通行で反応も乏しかった。

体温が急上昇したとか、血糖値が急落したとか、その為緊急対応したとか、一時入院したとかいう連絡がほぼ毎週来た。そして、食欲はあるのだが飲み込みがキチンとできなくなったという症状を聞いていたので、いよいよ栄養をとるために人工的な処置、言い換えると「延命措置」が必要になって来たと宣告を受けるのだろうと思った。

連絡を受けて東京の家内と大阪の妹夫婦に電話し、私の推測を説明し彼等の意見を聞いた。胃瘻等の特別な延命処置はせず、母には自然な最期を迎えさせたいということで議論するまでもなく全員の意見は一致した。元気な頃の母もそんなことを言っていた記憶がおぼろげながらある。

会議室の大きい机の正面に担当医と看護婦、横に施設の主任看護婦が座った。母の容態を説明するところから打合せが始まった。担当医は以前に会ったことがあるU医師で、大元の原因は糖尿病と甲状腺の不具合であり、現在の症状は食事を飲み込めない時がある、喉をゴロゴロ言わせ痰が詰まることがあるという。近いうちに口から食事をとれなくなる可能性がある。

私が家族の一致した意見で延命措置はしないと伝えると、事前に家族内の意見を調整して頂き感謝すると先ず彼女は言った。続けて延命処置と言っても一気に胃瘻に行くのではなく、栄養補給の経路として幾つかの方法があるという。手から点滴(抹消点滴というらしい)、鼻にチューブを通す、最終的に胃に穴を開けチューブを通す等々。延命治療と言っても1,0の判断ではないらしい。

そこで我々の話し合いで一致したのは、病院での延命治療はせず、施設の中でやれる範囲(つまり自宅治療と同じレベル)の対応までとする。担当医としてどこまで治療するか確認できたようだ。その上で彼女は、この施設は昼間は看護婦がいるので恵まれている。だが、夜間痰が詰まって呼吸困難になる場合、何らかの原因で血糖値が急低下する、等に緊急対応できない危険があることを承知してくれと言われた。やむを得ない。

私は担当医、施設と家族の意識合わせは出来たと思う。担当医は母の症状がジワジワと悪化していくのは、家族に覚悟せよというメッセージを発しているという意味でもあると言われた。叔父さんのような突然死と違い色々と準備する時間を与えてくれると。私はポックリがベストと思っていたが、成程そういう見方もあるのかと思った。連休中に息子夫婦が見舞ってくれたのは本当に良かった。

蛇足
担当医が母の分厚いカルテを抱えてまだ電子カルテルが出来てないと言い訳した。私は昔IT業界にいて友人が現役で病院のIT化をサポートしている、しかしIT化は地方の病院には負担が大きいようですねと相づちを打った。最近容体が悪化し始めた頃から、再び母がテレビを見るようになったのに我々は全員気付いていたが何故か分からなかった。母は実家の話を良くしたらしいが、東京や米国での私の記憶はなかったようだ。■
コメント
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