かぶれの世界(新)

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周回遅れの読書07春

2007-06-02 23:26:25 | 本と雑誌

季節ごとの読書録をすっかり忘れていた。今更‘春の読書’でもないが、今までに読んだ本の紹介をとりあえず。今回はマネー特集みたいな選書だが、その中では「デフレの進行をどう読むか」と「人口減少社会の新しい公式」を勧める。特に90年代以降の停滞を全く違った視点、労働分配率と人口構成、から説明している。両方とも尤もらしいのは面白い。

1.0+シャーロック・ホームズの記号論 シービオク 1994 岩波書店 楽しい読物と思ったが・・私には殆ど内容のないものだった。

2.0+わが上司後藤田正晴 佐々淳行 2000 文芸春秋 後藤田正晴氏の伝記かと思ったら著者の自慢話だった。しかし我田引水だとしても、次々と起こる危機への対応は自慢してもいい内容だ。ああ、この時著者が係っていたのかというまだ生々しい記憶のある事件の裏側が覗ける。

2.5+抵抗勢力は誰か 屋山太郎 2002 PHP 小泉政権登場直後の際本かと思いきや、本道を行く内容。5年後の今でも取り上げられた政治テーマは本筋を付き新鮮に感じるのは中々の物だ、未だに改善されてないということでもあるが。著者の官僚に対する不信感は筋金入りだ。

2.0人口減少社会の新しい公式 松谷明彦 2004 日本経済新聞 官僚が書くと絶対こうなるだろうという典型、しかし内容は決して悪くはない。戦後経済成長の人口要因を解明し、2030年頃に高齢化問題が深刻になるのは都市部だとのユニークな主張は興味深い。しかし、発想が製造業的かつ国内に片寄り過ぎて柔軟な思考にかけるきらいがある。

2.0日本縮小 2004 朝日新聞 上記の松谷氏がマクロデータで20-40年後を予測したのに対し、本書は足で稼いで将来を指し示す兆候を具体的なミクロ情報を整理して纏めたもの。2冊を纏めて読み比較対照してみると面白い。共通してサービス産業と地球規模での理解が不足している。

3.0-デフレの進行をどう読むか 橋本寿朗 2002 岩波書店 70年代から始まったインフレ率低下のもと労働分配率が上昇し企業収益が減少する「利潤圧縮メカニズム」が90年代の長期停滞の原因であるという著者の仮説が、データを駆使して展開される。その認識に基づいた後半の日本企業の海外展開、優良電機産業が壊滅的技術[1]に直面し突然経営不振に陥った(ローエンド破壊:Wikipedia)との指摘は当事者の一人として実感する。経済学者全般に言える現場感覚の欠如を感じさせない。

1.5+)IT不良資産 森秀明 2003 ダイアモンド社 ITを使って如何に競争力のある経営をするか、戦略意思・組織力・運営力の切り口で分析してIT活用法を提案している。日本企業が何故上手にIT活用できないか、IT費用の半分が無駄に利用されているか経営視点で説明されている。

(1.5+)ブランドと百円ショップ 堺屋太一 2005 朝日新聞 週刊誌に連載されたエッセイを集めた軽い読み物で、著者の知価革命を随所に展開している。官僚不信は著者のDNAにまでなっているが、小泉改革を酷評し自分の大臣時代の成果を示すことで本書の一貫性を損なっている。

2.0+ザ・クラッシュ MDワイス 2004 ダイアモンド社 ITバブル崩壊後の米国市場の不祥事に織り交ぜて架空の会社や個人投資家の苦闘を描き、再び大暴落が起こり回復していく同時進行ドラマ。政治は市場に手を出すなという考えで貫かれている。エンロンやワールドコムの粉飾決算や日本の財政赤字が妙に生々しく描かれ、個人投資家への教訓にもなっている。

1.5スローライフのマネー学 三井住友銀行 2003 小学館スクウェア スローライフが何なのか定かではないが、リスクを嫌う日本の個人資産家のための投資入門書。この後個人資産が定期預金から投資信託に移行し始めた。忘れていた初心を思い出せてくれる部分がある。

1.5+日銀券(上・下) 幸田真音 2004 新潮社 量的緩和解除のシミュレーション小説。実際に起ったこととはかなり異なる荒唐無稽な展開、基軸通貨ドルの暴落と日本経済の再評価、が色恋沙汰を交えて興味を繋ごうという著者の意図が却って散漫になっている。

2.0+シリコンバレーを抜け駆けろ! Pブロンソン 1999 角川文庫 90年代半ばのシリコンバレーを生き生きと表現している。高速道路やレストランなどの細部が当時を思い出させる。コンピューター技術の詳細な描写もそれらしい。しかし肝心の筋立てが雑で小説としての出来はB級というところか。

0.5誤解だらけの大リーグ神話 読売新聞運動部 2002 中公新書ラクレ 「誰でも知ってる大リーグ」にでも題名を変えたほうが良い。2002年当時でもそう目新しいことではなかった。

1.5+スポーツ解体新書 玉木正之 2003 NHK出版 スポーツと体育の違い、日本独特の企業スポーツ等について極めて真面目に(やや面白くない)解説されている。昨今の裏金問題もプロ野球とアマチア野球組織(新聞社)の利権を巡る戦いと解釈する視点は面白い。

1.0+こころがホッとする考え方 すがのたいぞう 2000 すばる舎 この数年カウンセラーと話した経験から、いかにもカウンセラーの書いた本という気がする。どんなに悪い事態でも物は考えよう、ああ言えばこう言うという感じの本だ。落ち込んだ時には読むと良いかもしれない。■


[1] Disruptive technology: C.M. Christensen, The Innovator’s Dilemma

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織り込み済みになった中国株暴落

2007-06-01 14:24:04 | 社会・経済

国上海株式市場が先月30日にまたしても6.5%下落した。過熱した株式市場を抑制する為、中国財務省が29日夜株式売買時にかかる印紙税を30日から0.1%から0.3%に引き上げるとの発表に反応したからだ。しかし、世界市場は動揺しなかった。

227日には上海市場が9%暴落したのを発端に、世界中の市場に波紋が広がり世界同時株安となったが、今回はさざ波程度しか反応せずニュースにもならなかった。同時株安後の調整(コレクション)が進み、中国株の暴落は中国の特殊事情と見られ織り込み済みになったのだろうか。

中国経済は好調で世界銀行は今年度の成長率を9.6%から10.3%に引き上げたばかりだ。しかし株価収益率(PER)は既に50を越え明らかに割高だ。にもかかわらず人民元安は過剰流動性、つまり金余りを起こしそれが株式市場に向かってバブルになった。 

先立って先月23日グリースパン前連銀議長は中国の株式高騰は持続不可能であり劇的に縮小する恐れがあるが、そのインパクトは中国の投資家に留まり世界市場はやり過ごせると述べたと報じられていた。

もう一つの目安は前回世界同時株安時、円キャリートレードの巻き戻しが起こり円高に振れたが、今回は為替相場が殆ど動かなかった。世界市場の連携は緊密になったが同時に中国市場の乱高下(wild swing)に対する対処法を習得したとCNN Moneyのワン氏は書いている。

私は先月21日「迫り来る中国株暴落リスク」で中国株暴落の危機が迫っていることを書いたが、世界市場は同時株安後改めて足元を見直し、中国株式が暴落する可能性を織り込んでその影響は中国国内に留まるとの予測が今回直ちに現実に起こったことで内心ほっとした。

エコノミスト誌(2007/05/30)は国内経済への暴落の影響もそれほど大きくないと見ている。中国の株式市場はまだ小さく売買可能な株式の時価総額はGDP25%であり、米国の150%、インドの100%に比べ僅かだという。

株式を保有する中国国民は全体の7%、家計の金融資産に占める株式の割合は15(米国は株に投資された年金基金を含め約半分)に過ぎない。中国政府の狙いは実体経済の引き締めではなく、預金から株式への資金移動を防ぎ明らかにバブル化した株式市場を冷却することであり、この1年間人々が預金を減らしている兆候も見られないという。

つまり規模を考えると株式相場の下落が中国経済に与える影響は思ったより軽微であるというのがエコノミスト誌の見立てである。私はそれほど楽観的にはなれないが、少なくとも中国の株式市場の暴落はあるものとして市場の嫌がるサプライズではなくなったといえる。■

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