恒例の年頭の大胆占いを紹介したい。調査機関のレポートや新聞テレビ報道から、それらしいと思うシナリオを組み立てて「占い」と称するもので、私独自の一次データは皆無である。過去は理路整然と尤もらしく説明する高名な学者や専門家といえども、未来を予測することは至難の業であり絶対的な信頼を得ることは先ずない。
にもかかわらず、素人の私が未来予測をやるのは大胆不敵であると十分認識した上で、あえて占いを共有したいと思います。私的には未来予測はとても頭の体操になり年寄りのボケ防止になるのです。加えて第三者に公表するので、それなりに真面目に考えた内容です。
経済開発協力機構(OECD)は2012年の主要国経済の実質成長率を以下のように予測している。EU failとは、今年欧州危機が深刻化した最悪ケースの予測値だ。占い欄は私の予測であり、2.0-とは2%未満、2.0+は2%以上を意味する。
US EURO Japan China India Brazil
2011 1.7 1.6 ▲0.3 9.3 7.7 3.4
2012 2.0 0.2 2.0 8.5 7.2 3.2
EU fail ▲1.8 ▲2.0 ▲0.2 7.4
占い 2.0- ▲0.3 2.0+ 9.0-
世界経済は欧州次第
今年も引き続き欧州次第、というのが2012年の世界経済の姿だ。換言すると、今年は欧州危機がこれ以上悪化しない楽観シナリオと、欧州危機が更に深刻化する悲観的シナリオの二本立てで考えておかないといけない。10日前に投函した年賀状の恒例「大胆占い」では、私は楽観的な立場をとり、以下のように「それ程悪い年にはならない」と書いた。
「2012年の世界経済は欧州危機が深まる中で、世界経済は絶対的な牽引車を失い連動性に欠け、マチマチの展開を見ると占う。各国は夫々の事情を抱え選挙イヤーで内向きの政策を重視せざるを得なくなる。米国景気は徐々に上向き、欧州経済はマイナス成長、新興国経済は刺激策で何とか勢いを保つ。日本経済は復興需要で先進国間では最も堅実な成長を見せる。辰年に相応しい成長は望めないが、それ程悪い年にはならないだろう。」
崩壊せずともジリ貧の欧州
欧州各国の問題を個別に追っていくと必ずしも楽観的にはなれない事情がある。欧州の債務問題は時を追う毎に深刻化していき、実体経済に悪影響を与えそれが金融市場に負のフィードバックを与える。つまり、実体経済と金融市場が相互に悪化要因になる「負のスパイラル」の‘安定した構造’が出来てしまった。残念ながら2012年もこの悪循環が続くと私は読む。
欧州危機は経済問題ではなく、極めて政治的な問題となりそうだ。フランス大統領選を控え二頭政治「メルコジ体制」が機能しなくなる可能性がある。両首脳が内向きになり思い切った対策を打てず、モグラ叩きを続ける可能性がある。結果、最悪シナリオは回避できても「崩壊せずともジリ貧」に陥る可能性は高い。
誰が最後の貸し手で救世主になるのか、いまだに明確ではない。財政危機に悩む米国は大統領選を控えそれどころではない。中国はすっかり熱が冷め、新体制の方針待ちだ。状況は「欧州は欧州が始末を付けろ」だ。仏銀が保有する伊国債が、仏格付けに悪影響を与えるようだと一大事になる。サルコジは何としてもメルケルを説得し金を出させなければならないが、ドイツは放漫財政に規律を求め「財政統合」の保証を求めるだろう。間違いなく2012年も会議は踊る。
春が近い米国
米国は消費が徐々に戻り住宅市場も改善の兆しを見せ、停滞していた雇用が着実に回復し始めた。だが、専門家は改善が長くは続かないとみている。その理由は春以降に家計部門の借金(住宅ローン)の調整が入り消費が軟化すると予測しているからだが、私はもう少し楽観視している。
米国の人口増加トレンドから見ると、成長率2.7%で中立(ゼロ成長)である。2%程度の成長では実質マイナス成長という見方もあるが、まずまず底堅いといってよい。従って量的緩和第3弾(QE3)は打たないと予測するが、悲観的シナリオになればQE3もあるだろう。
オバマ大統領が再選されるかどうか、支持率が50%を切った現状では不透明だ。失業率が8%台で再選された大統領は前例が無いそうだ。だが、共和党に有力な候補がいないのも一方の現実だ。茶会の支持を受けることは、中道派の支持を失うことを意味する。戦いはどちらが中道派を取り込むかと若者の投票率がどうなるかで決まる。現状ではオバマ再選が有力と予測する。
成長優先の新興国
新興国・資源国を悩ませてきた景気過熱と物価上昇懸念は、昨年各国が揃って引き締めを行い効果が出始めたタイミングで欧州危機の資本引き上げが襲い急激な為替下落に直面した。各国は物価か成長のどちらをとるか迫られ、再び金融緩和に向かい「優先順位は成長」にあると方針を鮮明にした。だとしても世界経済を牽引するほどの力強さは期待出来ないだろう。
中国は最早10%台の成長を続けることは期待できなくなったが、今後数年は8%台後半の成長が可能と予測する。欧米先進国への輸出が頭打ちになる中で、3割程度の国内消費を如何に増やすかが課題だ。しかし、新政権は欧州危機と不動産バブルのリスクに直面し対応を求められる。当面は安全運転に徹し、徐々に内需主導の経済に転換していくと予想する。
消去法で浮上する日本、その進路
以上のように2012年の世界経済は楽観できる状況には無い。その中で大震災復興という明確で具体的な需要がある日本経済は、消去法的に先進諸国間でトップの成績を取るだろう。仮に欧州危機が悪化したとしても、欧米の方がもっと悪影響を受けるのでトップは揺がないと予測する。しかし、必ずしも未来に展望の開けるトップでないことを肝に銘じるべきだ。
最も難しいのが日本の政局の行方だ。理屈が通らない政治と民意にマスコミが関る。野田首相は腹をくくって消費税増税に取り組むことにしたが、国会承認までの政治日程には党内外に様々なハードルが待ち構えている。秋に民主党代表選をどういう形で迎えるのか、私には全く予想が付かない。それ以前に解散や政権交代もありえる。最終的には国民が賢明な判断をすることを祈りたい。結果責任は政治だが、それは結局のところ政治家を選んだ国民の判断にある。
最後にお楽しみのスポーツ
今年MLBに移籍が予想されているプロ野球選手は、ダルビッシュ投手を除いて評価が非常に低いようだ。昨年の日本人MLBプレーヤーが活躍しなかったこと、特に松坂や西岡など高給の選手が期待を裏切り相場を下げたようだ。しかし、今年は期待が低い分だけ、意外感が高評価に繋がるかもしれない。特にダルビッシュと青木の活躍、イチローの復活を期待する。
野球より寧ろサッカー選手の方が、期待が大きい。今年も欧州に移籍する多くのJリーガーが報じられている。年々若い世代の海外進出が増えおり、欧州で競い合い成長して大化けする選手が出て来ると期待する。出来上がって海を渡るプロ野球選手は成長の余地が少ない。今年は清武が結果を出すと予測、他にワールドクラスの点取り屋が出て来るのを期待したい。■