一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第25回将棋ペンクラブ大賞贈呈式(後編)・完敗

2013-09-24 00:32:46 | 将棋ペンクラブ
上手・鈴木環那女流二段:1一香、1四歩、2一桂、2三歩、3一玉、3二金、3三銀、3四歩、4二飛、4三金、4四歩、5三歩、5四銀、6四歩、7四歩、8一桂、8四歩、9一香、9四歩 持駒:角
下手・一公:1六歩、1九香、2五歩、2六角、3六歩、3七桂、4五歩、4八飛、5六銀、5七歩、5八金、6六歩、7六歩、7七銀、7八金、7九玉、8七歩、8九桂、9七歩、9九香 持駒:なし
(△4二飛まで)

▲4四歩△同銀▲4六歩△3三銀▲4五銀△5五銀▲6七金左△6五歩▲同歩△7三桂▲5六銀△同銀▲同金△7五歩▲4五桂△4四歩▲3三桂成△同金寄

私は▲4四歩と取り込む。△同銀に、ここは迷った。第一感は▲4四同角で、△同金に▲5一銀と打って、かなり暴れられそうだ。
しかし、これでは一気に雌雄を決してしまうことになる。何といっても、鈴木女流二段との指導対局である。これが最初で最後の指導対局だろうから、大事に行きたかった。
気が利かないが、私は▲4六歩と控えて打つ。鈴木女流二段が、ううん、とマユをひそめた。
「指導対局をされている方、そろそろ決着をつけてください」
と、幹事の犬塚氏からアナウンスが入る。まったく忙しない。
「こんないい将棋を、止められませんよね」
と、鈴木女流二段がつぶやいた。私はちょっと、うれしくなる。
壇上には神谷広志七段が上がっているようだ。神谷七段は舌鋒鋭いので、周りはハラハラドキドキだ。しかし無難な内容だったようである。
鈴木女流二段は△3三銀。私は▲4五銀だが、これはつんのめった。ここは▲4五歩か、▲4五桂だった。▲4五銀には△6三銀でも困ったが、鈴木女流二段は△5五銀。私は▲6七金左だが、これではこちらがおもしろくなかった。
壇上ではお楽しみ抽選会が始まった。棋書やサイン色紙などがもれなく当たる企画だ。今回はあいうえお順で商品をいただけるらしいのだが、私は対局中で、中座ができない。どう考えたって、鈴木女流二段の横顔を眺めているほうがいい。
私は▲4五桂と跳ね、▲3三桂成と駒得を果たす。しかし△同金寄に、次の手はしくじった。

▲7五歩△8五桂▲8八銀△7六桂▲6七銀△8八桂成▲同玉△7二飛▲7六銀打△2七角▲4七金△5九銀 まで、70手で鈴木女流二段の勝ち。

湯川博士幹事のおいごさんは、玉を▲7九にやり、いつの間にかいい勝負になっていた。その左のご婦人も善戦していて、鈴木女流二段もとまどい気味である。
お楽しみプレゼントは、幹事・鷲北氏が提供した、バトルロイヤル風間氏描くところの女流棋士手ぬぐいを、鷲北氏が私のために取っておいてくれた。ジャケットの窓から「碓井涼子」さんと、「島井咲緒里」さんの似顔絵が見える。現・千葉女流四段は旧姓だし、島井女流二段はぷっくらと丸顔。「多田佳…」の文字も確認でき、かなりのレア物といえる。
私は▲7五歩と歩を補充し、やってこいと構えたが、これは鈴木女流二段の攻めを誘発しておもしろくなかった。△8五桂に▲8八銀、△7六桂に▲6七銀とは、利かされっ放しでおもしろくない。▲7五歩では▲4五歩だったか。
さらに△7二飛に、▲7六銀打が何たる手。鈴木女流二段の△2七角が次の△3六角成を狙って厳しく、一遍に受けなしになってしまった。
私は泣きの▲4七金だが、△5九銀に、静かに投了した。
鈴木女流二段が再びマユをひそめ、気の毒そうに?私を見る。女流棋士にこんな表情をされたのは初めてで、「私がずっと辛い将棋だったのに、なんかごめんなさい」という感じだった。
早速感想戦に移る。「これ、プロの実戦にもあったんですよ」と鈴木女流二段。間接的に私の将棋を評価してくれているようで、社交辞令でもうれしかった。
私は42手目△4四同銀の局面まで戻して、そこで▲4四同角はどうか、と口にする。しかし鈴木女流二段はその前、▲4四歩と取り込むところが勝負どころと見ていたようで、▲1五歩の突き捨てを提案してくれた。
しかし私は、己の見解をそのまま進めてしまう。
▲1五歩△同歩を一応入れ、▲4四歩△同銀▲同角△同金▲5一銀。ここで鈴木女流二段は△4三飛と浮く、といった。以下▲4五歩△5五金▲同銀△同銀は下手攻め切れない。やはり▲4四角は無謀、の結論になった。
また後方で見ていた後藤元気氏が、「△9四歩には▲9六歩と受けたほうがいい」といった。後藤氏は元奨励会の強豪である。これは貴重なアドバイスをいただいた。
左のふたりは対局中なので、感想戦はここまで。美人女流棋士の誉れ高い鈴木女流二段に教えていただき、とてもいい記念になった。本日いちばん充実したひとときを過ごしたのは、私だったと断言できる。
…とはいうものの、負ければやはり悔しい。私は項垂れて、幹事の荒幡氏や鷲北氏に泣きつく。もう少しいい将棋を指したかった。
あ、と思う。先ほどの感想戦、▲5一銀の変化で、△4三飛▲4五歩△5五金には▲同銀だったが、ここで▲4四歩と突く手はないか。△4一飛なら▲5五金△同銀▲5二金△4四飛▲同飛△同銀▲4一飛△2二玉▲4二銀成で下手優勢だ。
こうなればうまいが、▲5一銀には△4一飛と引かれ、▲4二歩△5一飛▲4四飛△4二金の結果は、やはり下手が悪いか…。
そろそろ中締めの時間である。楽しい時間はあっという間に過ぎるのだ。最後はみなで三本締め。シャシャシャン、シャシャシャン、シャシャシャン、よいしょ!! を3回。将棋ペンクラブは、本当に三本締めが好きだ。
「芙蓉の間」を出てうろうろしていると、湯川恵子さんが出てきた。私は改めてお祝いを述べる。
「このたびはおめでとうございます。やっと獲れましたね。でもいつかは獲れると思ってました。恵子さんの観戦記は、いつもおもしろかったですからね」
「あら~、ありがとう。大沢さんにそういっていただけるだけで、うれしいです」
と、こぼれるような笑顔の恵子さんであった。

※帰宅後、鈴木女流二段との将棋を考える。鈴木女流二段の「▲1五歩」の意味は、△同歩▲同香と1歩を入手して、△1三歩▲2四歩△同歩▲2五歩△同歩▲同桂△2四銀▲4四歩の狙いだったかもしれない。
あのときベラベラしゃべらず、鈴木女流二段の考えを拝聴しておけばよかったと、いまになって後悔した。
コメント
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