(11日のつづき)
私は秒読みに入ってまったく手が見えなくなり、相手に角を渡したり▲6五歩などの一手パスをやったりして、形勢は接近。いやひっくり返った。
第2図以下の指し手。△6七角▲8八玉△9六桂▲9七玉△8八銀▲9六玉△9四香▲同成香△7六角成▲7二飛成△同玉▲8三成桂△同玉▲9五桂△7二玉▲8三銀△6二玉▲2二竜△4二金
まで、Sar君の勝ち。
Sar君は△6七角。▲8八玉には△8九金もあったが、以下▲9八玉△9五香▲9七歩で逃れてそうだ(…というのは誤りで、△9五香に代えて△9七歩▲同玉△9五香▲9六歩△8八銀以下詰んでいたと思う)。
Sar君は△9六桂と追い、△9四香の犠打。私は▲同成香と取るしかなく、後手玉への詰めろが解けてしまった。
そして△7六角成が詰めろ。私は指す手に窮し▲7二飛成から迫ったが、これは詰まない。以下△4二金まで投げた。この将棋を負けるとは…。
「ボクが悪かったですよね」
とSar君。
いやいや悪いどころじゃないって。それを言うなら「ボク負けてましたよね」と言うところだろう。
「▲9三金と打ってもらって助かりました」
とSar君。
「そうそう、ここは▲6一飛成△同銀▲9三金で詰んでたでしょう」
私は勢い込んで返したが、Sar君は無反応だ。この順はあまり読んでいなかったようだ。
私は感想戦を終わらせ別の盤で検討していると、4時から男のShin氏が盤の前にきた。Shin 氏は近くで対局しており、私の将棋を見ていたのだ。
「ひどい将棋を指したよ。これを負けたら勝つ将棋がないってやつだよ」
私が愚痴ると、Shin氏はケラケラ笑う。その後二人で▲6一飛成の変化を検討したが、すぐに私の勝ちと結論がでた。私がクサリまくったのは言うまでもない。
4局目は大野八一雄七段に角落ちで教えていただく。しかしこういう場合は前局のショックが尾を引き、ロクな将棋にならないものだ。
私は居飛車の作戦。2筋の歩を換え▲2五飛と引く。高飛車で留めるのは私が時折用いる作戦である。さらに▲3七桂~▲4五桂。開始20手目にして早くも決断した。
これには△4四銀の一手とフンでいたが、大野七段は△6二銀。以下△6五歩~△6四金~△5五歩から△4四歩とされ、桂を殺されてしまった。
私も中央から反撃したが、桂損は大きすぎた。大した勝負所もなく、負け。
指導対局は安くないということもあるが、将棋はもっと大切に指さねばならない。前局の後遺症があったとはいえ、この将棋はいただけなかった。
5局目はShin氏と。Shin氏は何でも指すので作戦が立てにくいが、それだけに楽しくもある。本局は私の先手で、▲7六歩△3四歩▲2六歩。ここでShin氏は△4四歩と止めた。以下、四間飛車に振る。いままでありそうでなかった戦型だ。
私は▲4六銀と急戦に出る。▲3五歩にShin氏は△4五歩。以下▲3三角成△同飛▲3四歩△同銀▲5五銀と進んだが、△3四同銀では△3四同飛と取られたほうがイヤだった。これだと銀取りと△3九角が残って、私が忙しかった。
本譜はなかなかにアツい戦いが展開されたが、私は少しずつ自分が悪いと思っていた。
第1図はShin氏が△4九角と放ったところ。
以下▲5八歩△3八角成▲5九銀と進んだが、▲4八銀が活用できたので、私が得をしたと思った。
以下も難しい戦いが続いたのだが、最後は私の勝ち。私としては▲1六飛が敵陣に侵入できたのが大きかった。
感想戦で真っ先に戻されたのが第1図だったのだが、Shin氏は▲1六飛を取る気は全くなかったらしい。私は飛車を持たれるほうが実戦的にイヤだったのだが、ここが実戦心理のおもしろいところである。
6局目はいよいよ岡井奨励会三段に教えていただく。
岡井三段は昨年10月に昇段した大野門下期待の新鋭。門下初の四段として、かかる期待は大きい。
駒を並べ終わって、「手合いは、ひら…」と岡井三段がつぶやく。みなまで言わせず、角を落としていただいた。
対局開始。岡井三段はこれで3面指しになったが、そんなわけでポンポン指す。
私はプロ棋士に100局以上角落ちを教わっている。その大半は植山悦行七段と大野七段だが、どうしてもその2人と比較してしまう。岡井三段はまだ角落ちの上手を指しなれてないふうだが、初々しいともいえる。つまり彼に勝てるチャンスは今のうちだが、大野七段は私が入室した時、「奨励会員は厳しく指すよ」と言った。とすれば、やはり下手に分が悪いということになろうか。
私は居飛車の急戦風。岡井三段は平手感覚で指している感じがした。
将棋は中盤にさしかかる。ここまで上手の脅威を感じることもなく、まあまあ構想通りに指せていた。
岡井三段は△5四金と角取りに進出してきた。次の手はもちろんノータイムで指した。
(つづく)
私は秒読みに入ってまったく手が見えなくなり、相手に角を渡したり▲6五歩などの一手パスをやったりして、形勢は接近。いやひっくり返った。
第2図以下の指し手。△6七角▲8八玉△9六桂▲9七玉△8八銀▲9六玉△9四香▲同成香△7六角成▲7二飛成△同玉▲8三成桂△同玉▲9五桂△7二玉▲8三銀△6二玉▲2二竜△4二金
まで、Sar君の勝ち。
Sar君は△6七角。▲8八玉には△8九金もあったが、以下▲9八玉△9五香▲9七歩で逃れてそうだ(…というのは誤りで、△9五香に代えて△9七歩▲同玉△9五香▲9六歩△8八銀以下詰んでいたと思う)。
Sar君は△9六桂と追い、△9四香の犠打。私は▲同成香と取るしかなく、後手玉への詰めろが解けてしまった。
そして△7六角成が詰めろ。私は指す手に窮し▲7二飛成から迫ったが、これは詰まない。以下△4二金まで投げた。この将棋を負けるとは…。
「ボクが悪かったですよね」
とSar君。
いやいや悪いどころじゃないって。それを言うなら「ボク負けてましたよね」と言うところだろう。
「▲9三金と打ってもらって助かりました」
とSar君。
「そうそう、ここは▲6一飛成△同銀▲9三金で詰んでたでしょう」
私は勢い込んで返したが、Sar君は無反応だ。この順はあまり読んでいなかったようだ。
私は感想戦を終わらせ別の盤で検討していると、4時から男のShin氏が盤の前にきた。Shin 氏は近くで対局しており、私の将棋を見ていたのだ。
「ひどい将棋を指したよ。これを負けたら勝つ将棋がないってやつだよ」
私が愚痴ると、Shin氏はケラケラ笑う。その後二人で▲6一飛成の変化を検討したが、すぐに私の勝ちと結論がでた。私がクサリまくったのは言うまでもない。
4局目は大野八一雄七段に角落ちで教えていただく。しかしこういう場合は前局のショックが尾を引き、ロクな将棋にならないものだ。
私は居飛車の作戦。2筋の歩を換え▲2五飛と引く。高飛車で留めるのは私が時折用いる作戦である。さらに▲3七桂~▲4五桂。開始20手目にして早くも決断した。
これには△4四銀の一手とフンでいたが、大野七段は△6二銀。以下△6五歩~△6四金~△5五歩から△4四歩とされ、桂を殺されてしまった。
私も中央から反撃したが、桂損は大きすぎた。大した勝負所もなく、負け。
指導対局は安くないということもあるが、将棋はもっと大切に指さねばならない。前局の後遺症があったとはいえ、この将棋はいただけなかった。
5局目はShin氏と。Shin氏は何でも指すので作戦が立てにくいが、それだけに楽しくもある。本局は私の先手で、▲7六歩△3四歩▲2六歩。ここでShin氏は△4四歩と止めた。以下、四間飛車に振る。いままでありそうでなかった戦型だ。
私は▲4六銀と急戦に出る。▲3五歩にShin氏は△4五歩。以下▲3三角成△同飛▲3四歩△同銀▲5五銀と進んだが、△3四同銀では△3四同飛と取られたほうがイヤだった。これだと銀取りと△3九角が残って、私が忙しかった。
本譜はなかなかにアツい戦いが展開されたが、私は少しずつ自分が悪いと思っていた。
第1図はShin氏が△4九角と放ったところ。
以下▲5八歩△3八角成▲5九銀と進んだが、▲4八銀が活用できたので、私が得をしたと思った。
以下も難しい戦いが続いたのだが、最後は私の勝ち。私としては▲1六飛が敵陣に侵入できたのが大きかった。
感想戦で真っ先に戻されたのが第1図だったのだが、Shin氏は▲1六飛を取る気は全くなかったらしい。私は飛車を持たれるほうが実戦的にイヤだったのだが、ここが実戦心理のおもしろいところである。
6局目はいよいよ岡井奨励会三段に教えていただく。
岡井三段は昨年10月に昇段した大野門下期待の新鋭。門下初の四段として、かかる期待は大きい。
駒を並べ終わって、「手合いは、ひら…」と岡井三段がつぶやく。みなまで言わせず、角を落としていただいた。
対局開始。岡井三段はこれで3面指しになったが、そんなわけでポンポン指す。
私はプロ棋士に100局以上角落ちを教わっている。その大半は植山悦行七段と大野七段だが、どうしてもその2人と比較してしまう。岡井三段はまだ角落ちの上手を指しなれてないふうだが、初々しいともいえる。つまり彼に勝てるチャンスは今のうちだが、大野七段は私が入室した時、「奨励会員は厳しく指すよ」と言った。とすれば、やはり下手に分が悪いということになろうか。
私は居飛車の急戦風。岡井三段は平手感覚で指している感じがした。
将棋は中盤にさしかかる。ここまで上手の脅威を感じることもなく、まあまあ構想通りに指せていた。
岡井三段は△5四金と角取りに進出してきた。次の手はもちろんノータイムで指した。
(つづく)