見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

魅惑の古九谷/出光美術館

2004-09-14 00:48:21 | 行ったもの(美術館・見仏)
○出光美術館『古九谷―その謎にせまる―』

http://www.idemitsu.co.jp/museum/

 2年ほど前、NHKの『新日曜美術館』で「青い桜~謎の磁器・古九谷の美~」という特集を見て以来、その魅力を忘れられずにいる。

 もっとも、付け焼刃の趣味なので、あまり詳しいことは知らない。そのときの番組が、石川県の九谷焼美術館の紹介を併せたものだったので、古九谷の産地といえば加賀が定説だと思い込んでいたが、実は加賀説と有田説があり、未だ決着していないということも、今回の展示会で初めて知った次第である。

 それにしても古九谷、特に「青手」と呼ばれる一群の意匠には驚かされる。いわゆる「日本的」な美から、あまりにも遠くて、くらくらするほど大胆不敵である。黄と深緑の対比を基本とし、青と紫を加えるという劇的な色彩感覚。大ぶりな皿の面いっぱいを覆いつくすデザイン。生気あふれる色彩は、しばしば皿の裏側にまで及んでいる(すごい!まるで”余白”を恐れているかのようだ)。

 会場では、この「青手」の名品をたくさん見ることができる。「色絵渡兎文大皿」は、2羽(?)のウサギが耳を翼のようにして、海の上を飛んでいる図で、よくある伝統的な図柄なんだけど、古九谷の色彩にハマると、悪夢のように幻想的である。「色絵海老文大皿」には驚かされた。海波の上に躍り上がるような海老の姿が描かれているのだが、大胆にも皿全体を深緑一色で塗りつぶしてしまっている。目を凝らすと浮かび上がる海老のシルエットが、これも美しい夢のようだ。

 見どころは「青手」だけではない。今回の会場は、大きな金地屏風の前に古九谷を並べてさりげなくデザインの類似を示したり、日本の陶工がお手本にした中国陶器と対にしてみたり、中国の出版文化の興盛が陶器のデザインにも影響を与えたことを示すため、書物の挿絵や図譜をパネルで展示したり、いろいろ工夫があっておもしろい。

 また、「考古学が語る古九谷」のコーナーでは、加賀(石川県)および肥前有田(佐賀県)の古窯遺跡、および加賀藩邸・大聖寺藩邸跡(東京大学附属病院!)の発掘調査結果を見ることができる。

 前回の「磁都・景徳鎮1000年記念」もよかったし、昨夏の「皇帝を魅了したうつわ」も系統的で分かりやすく、解説が要を得ていておもしろかった。最近、出光の「陶磁器もの」はがんばっていると思う。この展示会、おすすめ度大。11月中旬まで。

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