○玉上琢彌訳注『源氏物語 第5巻』(角川文庫)1969.5
玉蔓(葛)をめぐる物語の続き。上京した夕顔の遺児・玉葛は、とりあえず養父気取りの源氏をはじめ、カタブツの夕霧、事情を知らない実弟の柏木、風流人の兵部卿宮、髭黒大将など、次々に男性の心を迷わせ続ける。「源氏物語」の中でも、これだけ多数の男性から言い寄られる女主人公は他にいないのではないか。
そのわりに玉蔓に人気がないのは、あまり「ロマンチック」でないからだと思う。
このあたり、世代も個性も異なるさまざまな登場人物を、作者は巧みに(=現実的に)書き分けている。もはや絶世の美女も、神のような貴公子も登場しない。そして彼らの恋愛も、あまり純粋とは言えない。
若い源氏の恋は純粋だった。たとえそれが不道徳であろうが、世のそしりを受けようが、愛する女性を我がものにするためなら、何もかも振り捨てるような一途さがあった。夕顔を五条の廃院に誘って2人きりの時間を過ごしたり、幼い紫の上を誘拐同然に奪い去ったり、父帝の中宮である藤壷のもとに忍び入ったり...
しかし、中年の源氏は、玉蔓に思いを寄せながら、弟の兵部卿宮に、わざと玉葛の姿を見せて、恋に煩悶する姿を楽しんでいたりする。兵部卿宮もイマイチ煮え切らないし。みんな「恋心」に対して不真面目なのだ。
な~んか、愛されているんだか、いないんだか、よく分からない、こんな愛され方じゃ嬉しくないなあ、というのが、一般的な玉蔓不人気の理由だと思う。女性の夢は、やっぱり、数より質。
でも、恋愛巧者には、こういう駆け引きがたまらなくおもしろいのかもしれない。「玉蔓十帖」って、そのまま舞台を現代に移したら、月9ドラマでもいけそうな気がする。私は最近の恋愛ドラマも見ないし、「近代小説」を読まないので、ちょっとしんどかったけど。
私は玉蔓は嫌いではないよ。なんとなく大柄な女性のイメージがある。はじめは髭黒大将との結婚を悔しく思っているけど、たぶん(少し鈍感で)適応性のある女性だから、起こってしまったことを受け入れて、最後にはきっと幸せを見つけたと思う。
さて、まだ続く。
玉蔓(葛)をめぐる物語の続き。上京した夕顔の遺児・玉葛は、とりあえず養父気取りの源氏をはじめ、カタブツの夕霧、事情を知らない実弟の柏木、風流人の兵部卿宮、髭黒大将など、次々に男性の心を迷わせ続ける。「源氏物語」の中でも、これだけ多数の男性から言い寄られる女主人公は他にいないのではないか。
そのわりに玉蔓に人気がないのは、あまり「ロマンチック」でないからだと思う。
このあたり、世代も個性も異なるさまざまな登場人物を、作者は巧みに(=現実的に)書き分けている。もはや絶世の美女も、神のような貴公子も登場しない。そして彼らの恋愛も、あまり純粋とは言えない。
若い源氏の恋は純粋だった。たとえそれが不道徳であろうが、世のそしりを受けようが、愛する女性を我がものにするためなら、何もかも振り捨てるような一途さがあった。夕顔を五条の廃院に誘って2人きりの時間を過ごしたり、幼い紫の上を誘拐同然に奪い去ったり、父帝の中宮である藤壷のもとに忍び入ったり...
しかし、中年の源氏は、玉蔓に思いを寄せながら、弟の兵部卿宮に、わざと玉葛の姿を見せて、恋に煩悶する姿を楽しんでいたりする。兵部卿宮もイマイチ煮え切らないし。みんな「恋心」に対して不真面目なのだ。
な~んか、愛されているんだか、いないんだか、よく分からない、こんな愛され方じゃ嬉しくないなあ、というのが、一般的な玉蔓不人気の理由だと思う。女性の夢は、やっぱり、数より質。
でも、恋愛巧者には、こういう駆け引きがたまらなくおもしろいのかもしれない。「玉蔓十帖」って、そのまま舞台を現代に移したら、月9ドラマでもいけそうな気がする。私は最近の恋愛ドラマも見ないし、「近代小説」を読まないので、ちょっとしんどかったけど。
私は玉蔓は嫌いではないよ。なんとなく大柄な女性のイメージがある。はじめは髭黒大将との結婚を悔しく思っているけど、たぶん(少し鈍感で)適応性のある女性だから、起こってしまったことを受け入れて、最後にはきっと幸せを見つけたと思う。
さて、まだ続く。