見もの・読みもの日記

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新緑の京都・奈良(2): 暁斎(Kyosai)ほか

2008-05-12 23:53:34 | 行ったもの(美術館・見仏)
 さて、週末関西旅行。初日(5/10)の午後は京都国立博物館へ。いちおう暁斎展を目指してきたのであるが、入館まで20分待ちだという。常設展を先に見て、人が少なくなるのを待とうと思ったが、結局、4時を過ぎても待ち時間は変わらなかった。

http://www.kyohaku.go.jp/jp/index_top.html

■特別展 没後120年記念『絵画の冒険者 暁斎 Kyosai-近代へ架ける橋』

 私は、河鍋暁斎はそんなに好きではない。何を描いても上手すぎるように感じるのだ。それに加えて、古典や先行作品をよく勉強していることが分かってしまう。それがつまらなくて、前半は、飛ばし飛ばし見ていた。いいなあ、と思ったのは、福富太郎コレクションとライデン国立民族学博物館所蔵の2枚の幽霊図。特に後者は、下絵に比べると、ぐっと下からねめつけるような幽霊の視線が迫力を増している。この生き生きした「眼力」、注意して見ていると、大画面の『新富座妖怪引幕』の妖怪たちにも、小品に描かれたカエルやカラスにも通じる、暁斎の特徴なのではないかと思った。

 この展覧会には、制作の過程を示す下絵がたくさん出ていて興味深かった。暁斎には、即興的な作品もあるけど、基本的には、綿密な構成のもと、作品を練り上げていくタイプなのではないかと思われた。

 また、暁斎は、多くの戯画や風刺画を残した反骨精神の持ち主ということになっているが、明治14年(1881)の第二回内国勧業博覧会に出品して、妙技二等賞(最高賞)を受賞している。ふーん、内国勧業博覧会といえば、工芸や芸術を明治新政府が可視的に序列化するためのイベントという側面があったと思うのだが、そこに参加することに抵抗はなかったのかなあ。私には、まだよく分からない人物である。

■平常展示&特集陳列

 近世絵画の部屋では「江戸初期の狩野派」を小特集。狩野山雪の『雪汀水禽図屏風』はすごい。金の砂浜に寄せる銀の波、右隻には鴎、左隻には千鳥が群れ飛ぶ。「哀しいほどに隅々まで美しい」「日本の花鳥画の真の傑作というにふさわしい」と、解説も大絶賛である。同じ作者の『蘭亭曲水図屏風』は、酔っ払い文人たちのさまざまな姿態が表情豊かで微笑ましい。狩野尚信の『李白観瀑図屏風』もいいなあ~。ぐっと身を乗り出し、あごを上げて滝を見上げる李白が好きだ。小さいのに迫力いっぱい。マンガっぽくて愛らしい。崖上の松の描写には「水墨の切れ味」が実感できる。

 「絵巻」に分類されているようだが、『舞踊図屏風』も見逃せない作品。思い思いのファッションでポーズを決める6人の女性を描く(京博のサイト、展示案内→平常展示→絵画→絵巻→展示品紹介に画像あり)。サントリー美術館の開館記念展で見た作品とよく似ているが、扇が水墨画であるところが異なる。

 「彫刻」の「小特集・神像」も興味深く、『特集陳列・平安時代の考古遺物-源氏物語の時代-』は、日本中が浮き立つ”源氏物語ミレニアム・イベント”に、敢えてこんな地味な考古遺物を持ってきた勇気に共感する。やっぱり、京都いいなあ。
コメント
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