○美術手帖 2008年6月号「京都アート探訪」
雑誌『美術手帖』はよく立ち読みするのだが、あまり買ったことはない。今月号は大好きな京都の特集、綴じ込みMAPも使えそうだったので、買ってしまった。なんといっても読みどころは、山下裕二セレクション「日本美術BEST1」だろう。分野別に、いったい何が選ばれているか、以下にネタバレで紹介してみよう(詳しい解説と写真図版は雑誌でお楽しみを)。
①障壁画BEST1:妙心寺天球院方丈 狩野山楽・山雪
のっけから知らない作品、と思ったら、一般公開されていないのだそうだ。山雪といえば、先日、京都国立博物館の『暁斎(Kyosai)』を見にいって、平常展の『雪汀水禽図屏風』に衝撃を受けた、あの山雪である。山下先生の解説によれば、狩野派でいちばんのインテリ、知的で、計算しつくした画面構成が得意で、同時に、どこか鬱屈したエネルギーをため込んでいるという。分かる分かる。探幽率いる江戸狩野に「置き去り」にされた京狩野(山楽・山雪)、これから注目したい。
②仏画BEST1:東福寺『大涅槃図』明兆
3/14~16の涅槃会に東福寺に行くと見られる。猫の横顔が少しヘン。
③水墨画BEST1:京都国立博物館『天橋立図』雪舟
雪舟展で見ていると思うのだけど、実はあまり印象がない。京博の平常展で出してくれないかなあ。ゆっくり見たい。
④絵巻BEST1:高山寺『将軍塚絵巻』
サントリー美術館の『鳥獣戯画』展で見たときは、心の中で大笑いした。好きだなあ、この「暴走族的な筆の速さ」!
⑤琳派BEST1:建仁寺『風神雷神図屏風』俵屋宗達
文句なし。私も、光琳より宗達のほうが好きだ。光琳は柳刃包丁でスーッとトリミングする感じ、宗達は鉈でぶった切る感じというのも、分かる分かる。でも世の中には、野蛮な「絵屋のオヤジ」宗達より、オーデコロンの香りただよう上品な光琳のほうが好き、という美術ファンもいるんだろうな。
⑥仏像BEST1:西住寺 宝誌和尚立像
おお! これはナイス・セレクション。京博に時々出ている、顔の下からもうひとつの顔が覗いている仏像である。「修学旅行生にガツンと見せたい仏像」って、いいなあ。確かに、奈良の大仏や清水の舞台より、こっちだろう。感受性の鋭い子は悪夢にうなされそうだが。
⑦仏像+建築BEST1:教王護国寺(東寺)講堂 立体曼荼羅
このへんは山下先生、意外とフツーの選び方。「いつもガランとしているから、東寺も応援しなきゃね」とおっしゃるけど、いいよ~修学旅行生は清水寺とか金閣寺に行ってもらえば。
⑧建築BEST1:西本願寺 飛雲閣
飛雲閣は、存在は知っているが、まだ残念ながら実際に見たことはない。アラーキーが写真集を出していましたね。
⑨庭園BEST1:慈照寺(銀閣寺)銀沙灘と向月台
銀閣寺は多くの人が行っているはずなのに、この砂で描いた抽象芸術には、けっこう気づいていないんじゃないか。驚いたことに、いつ頃作られたものなのか、よく分かっていないのだそうだ。江戸時代の絵画には、ほぼ同じようなものが描かれているというが、江戸時代のいつ頃なんだろう? いったい誰が? 「名前を残さないただの寺男が、あるとき突然やっちゃったみたいな」という想像が面白い。
⑩茶室BEST1:妙喜庵 待庵
⑪茶碗BEST1:楽美術館『黒楽茶碗(勾当)』長次郎
この2つはセットで考えたい、と筆者。妙喜庵は東福寺の末寺で、そこに茶室待庵があるのだそうだ。もしかすると私は特別拝観で入っているかも知れないが、茶室はまだ知識不足で味わえていない。茶碗は、楽茶碗を選んでくれてありがとう!
山下裕二先生は、ほしよりこ氏との「京都アートデート」にも登場。並河靖之七宝記念館、河井寛次郎記念館を訪ねている。どちらも知らなかった美術館で、今すぐ京都に飛んでいきたくなってしまった。ほしよりこ氏がイラストで紹介している河井寛次郎作の木彫のイヌ型脇息、ほしい。並河の七宝作品、アップの写真で紹介されているのは1点だけ(藤草花文花瓶)だが、その繊細な美しさは息を呑むよう。
ほし:「これから、明治の工芸は来るよ!」なんていったら、女の子が「知らなかった!」と(笑)
山下:むふふ。でも、それでグッとくる人は、ちょっといないと思うな~(笑)
という会話のオチに爆笑してしまった。いやいや。私はグッときますけど。
雑誌『美術手帖』はよく立ち読みするのだが、あまり買ったことはない。今月号は大好きな京都の特集、綴じ込みMAPも使えそうだったので、買ってしまった。なんといっても読みどころは、山下裕二セレクション「日本美術BEST1」だろう。分野別に、いったい何が選ばれているか、以下にネタバレで紹介してみよう(詳しい解説と写真図版は雑誌でお楽しみを)。
①障壁画BEST1:妙心寺天球院方丈 狩野山楽・山雪
のっけから知らない作品、と思ったら、一般公開されていないのだそうだ。山雪といえば、先日、京都国立博物館の『暁斎(Kyosai)』を見にいって、平常展の『雪汀水禽図屏風』に衝撃を受けた、あの山雪である。山下先生の解説によれば、狩野派でいちばんのインテリ、知的で、計算しつくした画面構成が得意で、同時に、どこか鬱屈したエネルギーをため込んでいるという。分かる分かる。探幽率いる江戸狩野に「置き去り」にされた京狩野(山楽・山雪)、これから注目したい。
②仏画BEST1:東福寺『大涅槃図』明兆
3/14~16の涅槃会に東福寺に行くと見られる。猫の横顔が少しヘン。
③水墨画BEST1:京都国立博物館『天橋立図』雪舟
雪舟展で見ていると思うのだけど、実はあまり印象がない。京博の平常展で出してくれないかなあ。ゆっくり見たい。
④絵巻BEST1:高山寺『将軍塚絵巻』
サントリー美術館の『鳥獣戯画』展で見たときは、心の中で大笑いした。好きだなあ、この「暴走族的な筆の速さ」!
⑤琳派BEST1:建仁寺『風神雷神図屏風』俵屋宗達
文句なし。私も、光琳より宗達のほうが好きだ。光琳は柳刃包丁でスーッとトリミングする感じ、宗達は鉈でぶった切る感じというのも、分かる分かる。でも世の中には、野蛮な「絵屋のオヤジ」宗達より、オーデコロンの香りただよう上品な光琳のほうが好き、という美術ファンもいるんだろうな。
⑥仏像BEST1:西住寺 宝誌和尚立像
おお! これはナイス・セレクション。京博に時々出ている、顔の下からもうひとつの顔が覗いている仏像である。「修学旅行生にガツンと見せたい仏像」って、いいなあ。確かに、奈良の大仏や清水の舞台より、こっちだろう。感受性の鋭い子は悪夢にうなされそうだが。
⑦仏像+建築BEST1:教王護国寺(東寺)講堂 立体曼荼羅
このへんは山下先生、意外とフツーの選び方。「いつもガランとしているから、東寺も応援しなきゃね」とおっしゃるけど、いいよ~修学旅行生は清水寺とか金閣寺に行ってもらえば。
⑧建築BEST1:西本願寺 飛雲閣
飛雲閣は、存在は知っているが、まだ残念ながら実際に見たことはない。アラーキーが写真集を出していましたね。
⑨庭園BEST1:慈照寺(銀閣寺)銀沙灘と向月台
銀閣寺は多くの人が行っているはずなのに、この砂で描いた抽象芸術には、けっこう気づいていないんじゃないか。驚いたことに、いつ頃作られたものなのか、よく分かっていないのだそうだ。江戸時代の絵画には、ほぼ同じようなものが描かれているというが、江戸時代のいつ頃なんだろう? いったい誰が? 「名前を残さないただの寺男が、あるとき突然やっちゃったみたいな」という想像が面白い。
⑩茶室BEST1:妙喜庵 待庵
⑪茶碗BEST1:楽美術館『黒楽茶碗(勾当)』長次郎
この2つはセットで考えたい、と筆者。妙喜庵は東福寺の末寺で、そこに茶室待庵があるのだそうだ。もしかすると私は特別拝観で入っているかも知れないが、茶室はまだ知識不足で味わえていない。茶碗は、楽茶碗を選んでくれてありがとう!
山下裕二先生は、ほしよりこ氏との「京都アートデート」にも登場。並河靖之七宝記念館、河井寛次郎記念館を訪ねている。どちらも知らなかった美術館で、今すぐ京都に飛んでいきたくなってしまった。ほしよりこ氏がイラストで紹介している河井寛次郎作の木彫のイヌ型脇息、ほしい。並河の七宝作品、アップの写真で紹介されているのは1点だけ(藤草花文花瓶)だが、その繊細な美しさは息を呑むよう。
ほし:「これから、明治の工芸は来るよ!」なんていったら、女の子が「知らなかった!」と(笑)
山下:むふふ。でも、それでグッとくる人は、ちょっといないと思うな~(笑)
という会話のオチに爆笑してしまった。いやいや。私はグッときますけど。