見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

うるわしニッポン/KAZARI(サントリー美術館)

2008-05-26 00:33:31 | 行ったもの(美術館・見仏)
○サントリー美術館 『KAZARI-日本美の情熱-』

http://www.suntory.co.jp/sma/

 そういえば、サントリー美術館で新しい企画展が始まる頃だった、と思って、サイトをチェックに行った。そうしたら、TOPに上がっている画像が、岩佐又兵衛の『浄瑠璃物語絵巻』(MOA美術館蔵)で、ぎゃっとなってしまった。これは混まないうちに見に行かなければ、と思って、開催2日目、さっそく見てきた。

 本展は、日本文化にあらわれた様々な「かざり」の世界を、絵画、工芸、芸能などから紹介したもの。会場に入ると、いきなり縄文土器と鉢合わせする。なるほど「かざる」情熱みなぎる造型である。けれど私は、すぐ先にあるはずの『浄瑠璃物語絵巻』が気になってしかたない。すばやく次に進んで、絵巻らしきものを探す。あった。だが、拍子抜けだったのは、展示ケースの前に誰もいなかったこと。

 やっぱり「鳥獣戯画」とか「河鍋暁斎」とか、ネームバリューのある固有名詞でないと、人って集まらないものなのかなあ。この『浄瑠璃物語絵巻』は、展示品中のイチ押しだと思うんだけど、みんな立ち止まらないなあ~。ちなみに、会期前半(~6/23)が巻四、後半(6/25~)が巻五の展示である。私がかつてMOA美術館で見たのは、本展のチラシ等にも使われている場面(御曹司が寝所の浄瑠璃姫を口説いているところ)で、これは巻四の白眉であるが、今日は違う箇所が開けてあった。ちょっと残念。でも、執拗なまでに描き込まれた障壁画が延々と続き、虚構と現実が溶け合う奇妙な感覚を味わうなら、展示箇所が最上。御曹司の着物の柄(猿と鴛鴦)にも注目したい。また、姫君の寝所に向かって歩む御曹司のつま先(極彩色の中で白足袋が目立つ)は、能楽師の所作のようだと思った。近世演劇研究家の広末保氏はこの絵巻を「絢爛たる野卑」と評されたそうだ。言い得て妙。

 もうひとつ見落とせないのが『春日龍珠箱』。見たことあるな、と思って、このブログを検索したら、2006年春に東京国立博物館の『新指定国宝・重要文化財』で見ていた。今回は、箱の四面が見られる展示スタイルになっているので、ぜひぐるりと四方をまわって見てほしい。春日五所の神々が描かれているが、角の生えた牡鹿にまたがった女房装束の女神は、『鹿男あおによし』の堀田イトちゃんを髣髴とさせる!

 「場をかざる」のセクションでは、中世の「唐物かざり」を復元。違い棚に飾られた唐物(磁器、漆器など)、元代絵画の三幅対(個人蔵)の前には、銅製の花立・香炉・蝋燭立の三具足(滋賀・聖衆来迎寺蔵)を合わせる。コラボレーションの効果で、ひとつひとつの道具が、生き生きとした表情を見せているように思う。近世の宴席をイメージして、緋毛氈の上に並んだうつわ類も同じだ。

 企画者の目配りにびっくりしたのは、階段ホールに飾られた平田一式飾。これって、どのくらい認知度があるのだろう。私は、むかし木下直之先生の公開セミナーで、スライドを見せてもらったことがある。仏具、陶器、金物、茶器などの日用品を素材に造る「見立て」人形のこと。アルチンボルドのマニエリスム絵画みたいだ。会場では、製作工程のビデオを見ることもできる。毎年、島根県出雲市の平田天満宮に奉納されており、近年は、自転車の部品やスポーツ用品など、近代工業製品をパーツにした一式飾も造られているそうだ(→平成19年度の作品)。

 このほか、甲冑、陣羽織、小袖、打掛、煙草入れなど、堪能したつもりだったが、買って帰った図録を見て唸ってしまった。会場には無かった優品の図版が、やたらと載っているのだ。特に屏風!! 実は、展示替リストをよく見ると、会期中全て「空白」となっているものがある。この展覧会は、京都・広島への巡回が予定されており、巡回会場でしか公開されない作品が、けっこう多いのだ。ずるい! とりあえず、私は、小沢華嶽筆『ちょうちょう踊り絵巻』が出る会期後半に、もう一回行きたい思っている。
コメント
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