○マキノ雅彦監督、大森寿美男脚本『次郎長三国志』
http://www.jirocho-movie.jp/
週末の気分転換に、チャンバラ娯楽映画を1本。むかし読んだ関川夏央の本『おじさんはなぜ時代小説が好きか』(岩波書店、2006)は、タイトルの答えを、ピュアな気持ちをストレートに表現するのは恥ずかしいと思っているおじさんたちが、「時代小説」という舞台を借りることで、純愛や恩返しなどの物語を安心して楽しむことができるから、と分析していた。私の場合、いわゆる「娯楽映画」も同様で、現代が舞台だと、気恥ずかしくて見る気になれない。「時代劇(小説)」というのは、さまざまなことを可能にする、便利なフィルタリングだと思う。
本作は、1950~1960年代、東宝・東映でつくられた人気シリーズのリメイクだそうだ。私は旧作を全く知らない。この映画を見たあとで、Wikipediaの「次郎長三国志」の項を読んで、キャストのほとんどが旧作の「流用」であるということを知って、妙に感心してしまった。
出来はまあ及第点。脇役は多彩で面白いが、主役の清水次郎長=中井貴一はミスキャストではないかと思う。「大馬鹿者でござんす」がキャッチコピーなのだが、中井貴一には中途半端に知性派のイメージがただよって、「大馬鹿者」に見えないのである。インテリ博徒、黒駒勝蔵との対比も生きてこない。
脚本は愁嘆場が長い(泣かされたけど)。大森寿美男さんは『風林火山』でも、同じような非難を受けていたっけ。チャンバラシーンは爽快。もっと見たい!という不満足感が残ったが、あまり長すぎるとボロが出るのかも知れない。三味線のBGMはぞくぞくする程いい。
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週末の気分転換に、チャンバラ娯楽映画を1本。むかし読んだ関川夏央の本『おじさんはなぜ時代小説が好きか』(岩波書店、2006)は、タイトルの答えを、ピュアな気持ちをストレートに表現するのは恥ずかしいと思っているおじさんたちが、「時代小説」という舞台を借りることで、純愛や恩返しなどの物語を安心して楽しむことができるから、と分析していた。私の場合、いわゆる「娯楽映画」も同様で、現代が舞台だと、気恥ずかしくて見る気になれない。「時代劇(小説)」というのは、さまざまなことを可能にする、便利なフィルタリングだと思う。
本作は、1950~1960年代、東宝・東映でつくられた人気シリーズのリメイクだそうだ。私は旧作を全く知らない。この映画を見たあとで、Wikipediaの「次郎長三国志」の項を読んで、キャストのほとんどが旧作の「流用」であるということを知って、妙に感心してしまった。
出来はまあ及第点。脇役は多彩で面白いが、主役の清水次郎長=中井貴一はミスキャストではないかと思う。「大馬鹿者でござんす」がキャッチコピーなのだが、中井貴一には中途半端に知性派のイメージがただよって、「大馬鹿者」に見えないのである。インテリ博徒、黒駒勝蔵との対比も生きてこない。
脚本は愁嘆場が長い(泣かされたけど)。大森寿美男さんは『風林火山』でも、同じような非難を受けていたっけ。チャンバラシーンは爽快。もっと見たい!という不満足感が残ったが、あまり長すぎるとボロが出るのかも知れない。三味線のBGMはぞくぞくする程いい。