見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

書誌学の快楽/国立国会図書館貴重書展

2008-10-25 23:58:16 | 行ったもの(美術館・見仏)
○国立国会図書館 開館60周年記念貴重書展『学ぶ・集う・楽しむ』

http://www.ndl.go.jp/

 国会図書館には、閲覧や研修で行ったことはあるが、展示会を見に行くのは初めてである。電子展示会のページを見たら、平成10年に開館50周年を記念して「貴重書展」を行ったらしいが、寡聞にして知らなかった。いや、知っていても行けなかったかもしれない。今回の貴重書展も、会期はわずか2週間、うち2回の日曜日は休館である。ケンカ売ってんのか!と言いたくなる。(この点、国立公文書館が、特別展に関して「会期中無休」の体制を取っていることは評価したい)

 それでも、なんとか土曜日に時間をやりくりして見に行った。記念展にふさわしく、貴重書・準貴重書約80点が公開されている。初めの数点を見て、唸ってしまった。それぞれ200~300字ほどの解説キャプションが付してあるのだが、これが実に的確なのだ。書写・刊本の別、成立年代、形態(大きさ)、内題と外題の別、造本(綴じ方、表紙)、伝本系統、書き入れや奥書・識語の有無など、古い本を見て私の知りたいと思うことが、全て簡潔にまとまっており、重要な奥書・識語は、必ず写真パネルで別掲してある。さすが! こういうプロ集団に扱われる本は幸せだなあ、としみじみ思った。

 第1部「学ぶ」では、著名な古典とその注釈・評釈の伝本を紹介しているが、やけに古活字本が多いのが気になった。もちろん貴重なんだけど「これもか」という感じ。勘ぐれば、平安~室町の写本を出し渋った結果なのだろうか。

 第2部「集う」では、江戸の学者たちにスポットを当てる。私は、平田篤胤の筆跡が一目で気に入ってしまった。字の大きさが揃っていて読みやすく、理系っぽい字を書く。これに対して、馬琴の筆跡はいかにも癇症で、付き合いにくそうである。馬琴旧蔵(?)『平妖伝』には感激。この展示会中、唯一の漢籍(中国刊本)だったと思う。それから、電子展示から『南総里見八犬伝』の「表紙集」と「見返し集」にリンクを貼っておこう。これ、以前の勤務先の図書館で発見したときは大感激だった。

 第3部「楽しむ」は、素朴な丹緑本から豪華な奈良絵本まで。面白かったのは、行幸絵巻や陣立て絵巻を作るのに、武者や従者のハンコを何種類か作り、それを組み合わせて(彩色を変えたり、持ちものを付け足したり)長い行列を作ってしまうという手法。画譜『賞春芳』は、さりげなく若冲の作品を開いて展示。画譜は学術書を扱う「書物問屋」から、師宣や歌麿の絵本は、娯楽本を扱う「地本問屋」から刊行された、という解説を読むと、後者って、現代のマンガの扱いだなあ、と思った。

 最後に、オマケみたいに「重要文化財」のコーナーがあり、見たかった『宗家文書』(対馬宗家倭館関係資料)を発見。でも全1,593冊のうちから、『館守日記』と『裁判記録』の2冊の表紙と、「倭館に虎が2頭立ち入ったので鉄砲で撃ちとめ、1頭は塩漬けにし、もう1頭は頭と皮を日本に送ったこと、残りの肉は館内で食したことなど」を記した『毎日記』のみ。この展示箇所の選び方は、ちょっと奇をてらい過ぎでは?

■参考:電子展示はこちらから。(※おすすめはスライドショー)
http://www.ndl.go.jp/exhibit60/index.html
コメント (1)
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