○東京美術倶楽部『東美アートフェア 秋-古美術・茶道具・工芸展』 山下裕二氏によるギャラリーツアー
http://www.toobi.co.jp/artfair/index.html
「東美アートフェア」とは、東京美術倶楽部で行われる3日間の展示即売会。東京美術商協同組合に加盟する94の美術商が出店する。そのホームページに「山下裕二氏をゲストに迎え、出展ブースを一緒に見てまわるギャラリーツアーを開催いたします」というお知らせを発見したのは、1ヶ月ほど前のことだ。「申込:不要(当日、会場指定場所へお集まり下さい)」って、ええ~大丈夫かなあ、と思ったが、とにかく行ってみることにした。
このアートフェア、当日券1,000円を買えば誰でも入れる催しなのだが、やはり招待状持参のお客さんが多い。男性はスーツ、女性は華やかなワンピースドレスか着物がほとんどで、ジーンズ姿の私は、場違いにたじろぐ。まだ時間があったので、様子を見ておこうと思って会場内へ。初めて目にする光景に、再びたじろぐ。広い会場は整然と区切られ、細い小路の左右に小さなブースが並んでいる。書画あり、仏像あり、浮世絵あり。あふれるほどの品数を並べている店舗もあれば、貴重品を数点のみ展示しているところもある。うわっ、これをどうやって見ればいいんだろう…と呆然としてブースの間を歩いているうち、時間になってしまった。
さて、ツアーの集合場所に行ってみると、何のかのと50人近い集まりになっている。結局、この人数ではギャラリーツアーは無理ということで、2階のお座敷で山下先生のお話を聞くことになった。「東美アートフェア」を紹介したフリーペーパーを参照しながら、この店には桃山時代の初期洋風画が出ているから見逃さないようにとか、この店は抱一の百回忌を描いた図が面白いとか、”バーチャルギャラリーツアー”をしていただいた。昨日はこのお店で絵を買ったとか、定窯の白磁の皿を買おうとして逃したなど、リアルな「お買い物」体験談も聞くことができた。
よかったのは、これで、とりあえず各ブースに足を踏み入れてみる度胸がついたこと。4階から1店ずつ覗いていくことにした。繭山龍泉堂は、素人の私でも名前を聞いたことのある中国陶磁の有名店。山下先生は、中国陶磁について、明清の分かりやすい染付が値上がりしすぎで、唐宋など古いものが安すぎるんじゃないか?とおっしゃっていたが、値段を見て、ナルホドと思う。ふうーん。唐代の小さいお皿なら、ほぼ私の給料1ヶ月分で買えるんだな。でも、いちばん心惹かれたのは、やっぱり分かりやすい乾隆年製の黄地緑釉龍文皿。これは230万円で手が出せない。
と、隣りにいた男性が、店員さんに「拝見します」と声をかけて、白磁金縁の皿(値札なし)を手に取り、慎重に裏返して眺め始めた。これには驚いた。展覧会と違って、即売会というところは、品物を手に取って確かめることが許されるのである。周りを見ていると、けっこう、この権利を行使しているお客さんがいる。宝満堂というお店で、ズラリ並んだ歴代の楽茶碗(1件200~300万円)を見たときは、持ってみたくて手がうずいたが、やっぱり諦めた。スマートに手を出すのは、一見さんでは無理。もう少し修業を積んでからトライしようと思う。
絵画では、万葉洞で、椿椿山の菊と牡丹を描いた双幅の掛け軸を見つけた。椿山は大好きなので、ちょっと色気を出して値札を見たら、700万円。でも、700万円の掛け軸を、間にガラスもなく、舐めるように眺めることができるのは、展覧会では味わえない無上の幸福である。これ、やみつきになりそう。ちなみに、山下先生の「ツアー」に来ていたのは、東京美術倶楽部に来るのは数回目(でも即売会や正札会は未体験)というビギナーが大半だった。「なるほど。こういうお客さんを呼び込むために、この企画を立てたんですね」という山下先生の言葉に、主催者の方は笑顔でうなずいていたけれど、私は、見事その術中にはまってしまったみたい。
最後に、本気で目の色が変わりかけたのは、大口美術店。三井記念美術館で見て以来、欲しいと思っていた「茶籠」の特集をしていたのだ。茶籠が10~20万円。茶籠向きのミニサイズの茶道具セットは40万円くらいで買えることが分かった。うーむ。10万円を超す買いものといえば、パソコンしか経験のない私だが、かなり本気で思い悩んでいる。
http://www.toobi.co.jp/artfair/index.html
「東美アートフェア」とは、東京美術倶楽部で行われる3日間の展示即売会。東京美術商協同組合に加盟する94の美術商が出店する。そのホームページに「山下裕二氏をゲストに迎え、出展ブースを一緒に見てまわるギャラリーツアーを開催いたします」というお知らせを発見したのは、1ヶ月ほど前のことだ。「申込:不要(当日、会場指定場所へお集まり下さい)」って、ええ~大丈夫かなあ、と思ったが、とにかく行ってみることにした。
このアートフェア、当日券1,000円を買えば誰でも入れる催しなのだが、やはり招待状持参のお客さんが多い。男性はスーツ、女性は華やかなワンピースドレスか着物がほとんどで、ジーンズ姿の私は、場違いにたじろぐ。まだ時間があったので、様子を見ておこうと思って会場内へ。初めて目にする光景に、再びたじろぐ。広い会場は整然と区切られ、細い小路の左右に小さなブースが並んでいる。書画あり、仏像あり、浮世絵あり。あふれるほどの品数を並べている店舗もあれば、貴重品を数点のみ展示しているところもある。うわっ、これをどうやって見ればいいんだろう…と呆然としてブースの間を歩いているうち、時間になってしまった。
さて、ツアーの集合場所に行ってみると、何のかのと50人近い集まりになっている。結局、この人数ではギャラリーツアーは無理ということで、2階のお座敷で山下先生のお話を聞くことになった。「東美アートフェア」を紹介したフリーペーパーを参照しながら、この店には桃山時代の初期洋風画が出ているから見逃さないようにとか、この店は抱一の百回忌を描いた図が面白いとか、”バーチャルギャラリーツアー”をしていただいた。昨日はこのお店で絵を買ったとか、定窯の白磁の皿を買おうとして逃したなど、リアルな「お買い物」体験談も聞くことができた。
よかったのは、これで、とりあえず各ブースに足を踏み入れてみる度胸がついたこと。4階から1店ずつ覗いていくことにした。繭山龍泉堂は、素人の私でも名前を聞いたことのある中国陶磁の有名店。山下先生は、中国陶磁について、明清の分かりやすい染付が値上がりしすぎで、唐宋など古いものが安すぎるんじゃないか?とおっしゃっていたが、値段を見て、ナルホドと思う。ふうーん。唐代の小さいお皿なら、ほぼ私の給料1ヶ月分で買えるんだな。でも、いちばん心惹かれたのは、やっぱり分かりやすい乾隆年製の黄地緑釉龍文皿。これは230万円で手が出せない。
と、隣りにいた男性が、店員さんに「拝見します」と声をかけて、白磁金縁の皿(値札なし)を手に取り、慎重に裏返して眺め始めた。これには驚いた。展覧会と違って、即売会というところは、品物を手に取って確かめることが許されるのである。周りを見ていると、けっこう、この権利を行使しているお客さんがいる。宝満堂というお店で、ズラリ並んだ歴代の楽茶碗(1件200~300万円)を見たときは、持ってみたくて手がうずいたが、やっぱり諦めた。スマートに手を出すのは、一見さんでは無理。もう少し修業を積んでからトライしようと思う。
絵画では、万葉洞で、椿椿山の菊と牡丹を描いた双幅の掛け軸を見つけた。椿山は大好きなので、ちょっと色気を出して値札を見たら、700万円。でも、700万円の掛け軸を、間にガラスもなく、舐めるように眺めることができるのは、展覧会では味わえない無上の幸福である。これ、やみつきになりそう。ちなみに、山下先生の「ツアー」に来ていたのは、東京美術倶楽部に来るのは数回目(でも即売会や正札会は未体験)というビギナーが大半だった。「なるほど。こういうお客さんを呼び込むために、この企画を立てたんですね」という山下先生の言葉に、主催者の方は笑顔でうなずいていたけれど、私は、見事その術中にはまってしまったみたい。
最後に、本気で目の色が変わりかけたのは、大口美術店。三井記念美術館で見て以来、欲しいと思っていた「茶籠」の特集をしていたのだ。茶籠が10~20万円。茶籠向きのミニサイズの茶道具セットは40万円くらいで買えることが分かった。うーむ。10万円を超す買いものといえば、パソコンしか経験のない私だが、かなり本気で思い悩んでいる。