見もの・読みもの日記

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雪村の竹林七賢図屏風/名品展(畠山記念館)

2009-05-24 22:48:57 | 行ったもの(美術館・見仏)
畠山記念館 春季展 開館45周年記念『畠山記念館名品展-季節の書画と茶道具』(2009年4月11日~6月21日)

 16日から始まった後期を見てきた。前期で味をしめたので、この日も展示室でお抹茶をいただき、心豊かに鑑賞。正面には、伝・趙昌筆『林檎花図』(国宝・南宋時代)。何だか、いっぱしの茶人になった気分である。

 宗達筆『蓮池水禽図』の季節は、たぶん五月の末か六月だろう。ぼやぼやした水墨のにじみが湿気の多さを、しかし、気持ちのよい涼しさを感じさせる。硬く閉じた蓮の蕾、薄いレースのようにたよりない蓮の葉が、水蒸気に霞む。その下で、元気よく水を足掻き立てる水鳥のやんちゃな姿。水に濡れて逆立った頭の羽毛が、いたずら坊主みたいで可愛い。あらためて気づいたけど、同じ宗達の『蓮池水禽図』でも、京博のもの(水鳥が2羽)とは違うんだな。

 『継色紙』(末の松山)は久しぶりだ。前に見たときは「本心がフクザツに揺れ動いている感じ」なんて書いているが、今回は、揺れ動きながらも、全体としては、左下がりに行頭が下がっていくのが気になった。表面上の言葉は激しいけど、だんだんテンションは下がっていくように感じられる。

 さて、前期は渡辺始興の『四季花木図屏風』が展示されていた奥の展示ケースは、雪村周継筆『竹林七賢図屏風』に替わっていた。これは楽しい。ネットに画像はあるけれど、実際に屏風の前に立ってみないと、こんなマンガみたいな人物たちを、ほぼ等身大にでかでかと描いた楽しさは伝わってこないと思う。左隻の端の、真上を仰いだ人物が面白いので、ついそっちに引き付けられてしまうが、ここは、定石どおり、右隻から視線を走らせたい。そうするとムズカシイ顔の男を、もう1人の男が抱えるようにして「ま、ま、入って入って」という感じで、自然と視線が画面中央に誘導されていく。いずれも、隠者とは思えない、役者のような生き生きした表情。マンガの「吹き出し」を描き加え、セリフを加えて悪戯してみたくなる。左から2人目、「げー!マジかよ」なんてふうに。そして最後は、何を見つけたのやら、天空に消えていく視線。

 『竹林七賢図』にもいろいろあって、私は蕭白の同名作品(三重県立美術館)の冷え冷えした孤独感も好きだが、雪村の描く七賢図は、白雪姫を取り巻く7人の小人みたいに仲がよさそうで、本当に楽しそうだ。気になって、2002年の『雪村展』(千葉市美術館他)の図録を引っ張り出してみたら、もっと楽しそうな『竹林七賢酔舞』なんて作品もあるのだな、雪村には。なお、屏風の7人は、右端から、嵆康(けいこう)、向秀(しょうしゅう)、山濤(さんとう)、劉伶(りゅうれい)。左隻は、阮咸(げんかん)と王戎(おうじゅう)、阮籍(げんせき)に比定されているそうだ。晩年、福島県の三春での作。好きな画題を好きなように描いている感じがする。羨ましい。
コメント
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