見もの・読みもの日記

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ファイナル記念/雑誌・芸術新潮「五百羅漢の絵師 狩野一信」

2011-07-04 00:22:22 | 読んだもの(書籍)
○『芸術新潮』2011年5月号「五百羅漢の絵師 狩野一信」 新潮社 2011.5

 江戸東京博物館の特別展『五百羅漢-幕末の絵師狩野一信 増上寺秘蔵の仏画』が、今日で幕を閉じた。関係者の皆さん、ありがとう! 私は、5月15日のシンポジウムのあとに見てきたのだが、最後の週末、名残りを惜しんで、もう一度、見に行ってきた。美術館や博物館が所蔵する美術品と違って、神社仏閣の「宝物」は、どんなに需要があっても簡単に見られるものではない。この作品を、百幅まとめて見られる機会は、私の残りの人生に、もう二度とないかもしれないと思って感謝する。

 この展覧会を心待ちにしていた美術ファンは、私のように早めに見に行ってしまっただろうから、今頃はもう、閑古鳥が鳴いているんじゃないかと思っていた。そうしたら、5月のときより人が多いくらいで、びっくりした。テレビや雑誌でもそれなりに取り上げられていたようだが、やっぱり口コミの力だろうか。twitterで「五百羅漢」を検索してみたら、「面白かった」「行ってよかった」などのつぶやき多数(タグは #RKN500)。会場も若者が多くて、「羅漢さん、マジすごいッス!」(腹の中の仏様を見せつけられたサルの科白)とか言い合いながら、自由に楽しんでいた。あと、妙に真剣に見ていた小学生くらいの男の子もいて、記憶に残るといいなあ、とひそかに思った。

 帰宅してから、以前、買っておいた『芸術新潮』を取り出して、復習の復習。限られた頁数の中で、やっぱり、いい場面を掲載しているなあ、と感心する。9幅・10幅の「浴室」は、全体としても面白いが、どの部分も面白い。すだれ&湯けむり越しの羅漢さんとか、手前の頬髭を従者に剃らせる羅漢さんのポーズ・表情・衣装も絶妙。

 第5幅「名相」で独鈷杵を持って海にもぐろうとしている白髪の羅漢さんとか、第15幅「論議」で鼻をかんでいる羅漢さんとか、あ、やっぱりそこが気になるか、と同感して嬉しくなる箇所もずいぶんあった。

 「一信の絵筆これに極まる」が、第20幅「六道・地獄」であるというのも、何度も百幅全体を眺め返してみると、最後には納得。特に私は、下方の地獄図よりも、上方の羅漢さんのポーズと表情が好きだ。肥痩の強いうねうねした線で、極端に強調された衣服の皺にも力がみなぎっている。でも私は、1幅だけ貰えるなら、第32幅「修羅道」がほしい。武者絵とか合戦図として、すごくカッコいいのである。

 『芸術新潮』本号には(5月のシンポジウムでも話題が出ていたが)「全国五百羅漢めぐりマップ」が紹介されているのも嬉しい。加西市北条町の五百羅漢寺は、先日、広島出張の帰りに寄ってきてもよかったな。兵庫県に行く機会は、近いうちにまたありそうなので、忘れないでおこう。

5月15日シンポジウム聴講の記事

同、会場見学の記事

 上記の記事でも紹介した「羅漢新聞」は、その後、順調に発展・増殖していた。会期終了と同時に忘れられるのは、個人的に、あまりに惜しいと思ったので、一部を写真に撮ってきた(→フォトチャンネル)。スタッフの方に「写真に撮ってもいいですか?」と聞いたら、快く許してもらったけど、ブログに掲載したいとは言わなかったので、クレームがあれば非公開にする。さっき「#RKN500」のツィートを見ていたら「羅漢展の『羅漢新聞』は嫁ぎ先が決まったようです」の情報あり。詳しいことは分からないが、よかった!
コメント
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