○太田記念美術館 特別展『没後150年 破天荒の浮世絵師 歌川国芳』(2011年6月1日~7月28日)
まだ今のように日本美術に詳しくなかった頃から、歌川国芳(1798-1861)は大好きだった。北斎よりも写楽よりも国芳だった。『相馬の古内裏』の巨大ガイコツとか、『宮本武蔵と巨鯨』の背美クジラとか、教科書に載る「浮世絵」の枠を大いにはみ出した、あやしさとカッコよさがあった。
私は、90年代に大規模な国芳展を2つ見た記憶がある。「国芳/展覧会図録」というサイトによると、1つは、大丸ミュージアム・KYOTOで開かれた『国芳の世界展』だと思う。確か小雪のちらつく冬に、京都の友人を訪ねていって、四条通のデパートで見た。もう1つは、東京(地区)の美術館だったと思うので、サントリー美術館の『歌川国芳』ではないかと思う。すっかり忘れていたが、あれらは生誕200年(1998年)にあわせた催しだったらしい。
そして、今年はまた、妙に盛り上がっていると思ったら、没後150年なのだそうだ。12月に森アーツセンターにやってくる『歌川国芳展』も楽しみだが、まずは先陣を切って、太田記念美術館である。前期と後期で、すっかり展示内容が変わるというので、実は2回行ってきた。どちらもすごい人気だった。
■前期:豪快なる武者と妖怪(2011年6月1日~6月26日)
武者絵、妖怪絵、役者絵が中心。圧巻は『国芳芝居草稿』で、「5メートル近くに及ぶ絵巻の中に、所狭しと歌舞伎役者たちを描いたデッサン」(個人蔵)の全巻公開。国芳作品の登場人物たちは、実に身体のひねり、手足の置きどころがカッコよくて、センスあるなーと思っていたのだが、あれは国芳による「振りつけ」ではなく、歌舞伎の見栄を写実的に写していたのだ、ということを感じた。ちなみにYouTubeに動画が上がっているのだが(5/31付け)大丈夫なのか?
■後期:遊び心と西洋の風(2011年7月1日~7月28日)
国芳のもうひとつの側面、戯画多数。きゃっきゃと騒ぎながら見ている女の子もいれば、耐え切れずにぶふっと噴き出しているおじさんもいて、観客の反応が面白い。猫、かわいいなー。狸の○○シリーズは、さすがにひとことも解説なし(笑)。肉筆画も魅力的で、下絵なしの即興画とおぼしい『甲子大黒図』、竹(笹?)にぼってり積もった雪を、墨色の塗り残しで表現した『雪中屋根舟美人図』(静嘉堂文庫)に見惚れた。
洋風画は、地階の第3展示室でたっぷりと。ニューホフ著『東西海陸紀行』の挿絵に学んだ作品を、その元絵の図版と見比べる展示。『忠臣蔵十一段目夜討の図』(※画像:Wiki)の斬新で印象的な風景が、実は『東西海陸紀行』のバタビア領主館の図を原本にしているという指摘が、いちばん衝撃的だった。こういう粉本関係は、これからもっと見つかるだろう。でも、そのことは、「絵を描くこと」に貪欲だった国芳の魅力を、何ら損なうものではないと思っている。
スカイツリーはご愛嬌だけど、うれしくなるなあ。
まだ今のように日本美術に詳しくなかった頃から、歌川国芳(1798-1861)は大好きだった。北斎よりも写楽よりも国芳だった。『相馬の古内裏』の巨大ガイコツとか、『宮本武蔵と巨鯨』の背美クジラとか、教科書に載る「浮世絵」の枠を大いにはみ出した、あやしさとカッコよさがあった。
私は、90年代に大規模な国芳展を2つ見た記憶がある。「国芳/展覧会図録」というサイトによると、1つは、大丸ミュージアム・KYOTOで開かれた『国芳の世界展』だと思う。確か小雪のちらつく冬に、京都の友人を訪ねていって、四条通のデパートで見た。もう1つは、東京(地区)の美術館だったと思うので、サントリー美術館の『歌川国芳』ではないかと思う。すっかり忘れていたが、あれらは生誕200年(1998年)にあわせた催しだったらしい。
そして、今年はまた、妙に盛り上がっていると思ったら、没後150年なのだそうだ。12月に森アーツセンターにやってくる『歌川国芳展』も楽しみだが、まずは先陣を切って、太田記念美術館である。前期と後期で、すっかり展示内容が変わるというので、実は2回行ってきた。どちらもすごい人気だった。
■前期:豪快なる武者と妖怪(2011年6月1日~6月26日)
武者絵、妖怪絵、役者絵が中心。圧巻は『国芳芝居草稿』で、「5メートル近くに及ぶ絵巻の中に、所狭しと歌舞伎役者たちを描いたデッサン」(個人蔵)の全巻公開。国芳作品の登場人物たちは、実に身体のひねり、手足の置きどころがカッコよくて、センスあるなーと思っていたのだが、あれは国芳による「振りつけ」ではなく、歌舞伎の見栄を写実的に写していたのだ、ということを感じた。ちなみにYouTubeに動画が上がっているのだが(5/31付け)大丈夫なのか?
■後期:遊び心と西洋の風(2011年7月1日~7月28日)
国芳のもうひとつの側面、戯画多数。きゃっきゃと騒ぎながら見ている女の子もいれば、耐え切れずにぶふっと噴き出しているおじさんもいて、観客の反応が面白い。猫、かわいいなー。狸の○○シリーズは、さすがにひとことも解説なし(笑)。肉筆画も魅力的で、下絵なしの即興画とおぼしい『甲子大黒図』、竹(笹?)にぼってり積もった雪を、墨色の塗り残しで表現した『雪中屋根舟美人図』(静嘉堂文庫)に見惚れた。
洋風画は、地階の第3展示室でたっぷりと。ニューホフ著『東西海陸紀行』の挿絵に学んだ作品を、その元絵の図版と見比べる展示。『忠臣蔵十一段目夜討の図』(※画像:Wiki)の斬新で印象的な風景が、実は『東西海陸紀行』のバタビア領主館の図を原本にしているという指摘が、いちばん衝撃的だった。こういう粉本関係は、これからもっと見つかるだろう。でも、そのことは、「絵を描くこと」に貪欲だった国芳の魅力を、何ら損なうものではないと思っている。
スカイツリーはご愛嬌だけど、うれしくなるなあ。