見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

初訪問/近代中国絵画 定静堂コレクション(和泉市久保惣記念美術館)

2011-07-23 22:22:58 | 行ったもの(美術館・見仏)
○和泉市久保惣記念美術館 常設展『近代中国絵画-定静堂(ていせいどう)コレクションの名品-』(2011年6月11日~7月31日)ほか

 9つの所蔵館で順次開催中の「関西中国書画コレクション展」。全ての会場を訪ねてみようと計画している。

 今回、初訪問の久保惣記念美術館は、明治以来、和泉市で綿織物業を営み、昭和52年(1977)に廃業した久保惣株式会社並びに久保家が、和泉市に寄附したもの。数ある名品コレクションの中で、私がいちばんに思い出すのは、『青磁鳳凰耳花生(銘・万声)』である。泉北高速鉄道の和泉中央駅から『美術館前』行きバスに乗車。この駅には、なぜか見覚えがあった。西国札所第四番の施福寺に行くバスが通っているので、そのせい?と思ったら、さらに昔、河内長野市の観心寺に行った帰りに、桜井神社(割り拝殿が国宝)というところに寄っているらしい。当時の同行者(マイナー史跡好き)とも長いつきあいになる。

 バスで駅から10分ほどだが、終点「美術館前」より前の停留所で、目の前に久保惣記念美術館らしき建物が見えてきて、慌てた。実は、正面入口まで、優にバス停1区間分以上の広さがあるのである。

 入口に隣接する新館の第1室は、中国の工芸品を展示。青銅器コレクションがけっこうすごい。東京の根津美術館とか、泉屋博古館とか、実業家の間で、青銅器ブームがあったのかな。根津美術館の青銅器がゴツゴツしているのに対し、ここのコレクションは、壺や瓶など、わりとまろやか造形が多いように思った。それから、大小の帯鉤(たいこう。帯どめ、バックル)が並んでいて「江川コレクション」という注記がされていた。

 隣りの第2室は、印象派などの西洋絵画。銅版画の古地図もあり。長い遊歩道を通って、本館へ。第3室と5室を使って行われているのが、定静堂コレクション展である。中間の第4室は中国の石造品の展示で、唐代の墓誌などがむきだしで無造作に置かれていて、ちょっとびっくりした。

 定静堂こと林宗毅氏(1923-2006)は、台湾三大名家の筆頭・林本源家の嫡流で、実業家として活躍し、昭和48年(1973)日本に帰化、明清時代から近代に至る書画コレクションは、台北の国立故宮博物院、東京国立博物館、和泉市久保惣記念美術館に寄贈されているそうだ。

 中国も近代絵画になると、知らない画家が多い。あと、日本の日本画に比べると、墨色と他の色彩が混ざって、画面が濁った感じのする作品が多く、あまり好きになれないなあ、と思う。色がきれいだと思ったのは、溥儒(溥心畬、愛新覚羅の一族)の作品。「南張北溥」と、張大千と並称されることもあるそうだ。その張大千も、へえ、こんな作品があるのか、というような艶麗な美女を描いた扇面図『竹窓仕女図』が出ていた。

 どことなく日本人好みの『山水図』があって、作者を見たら、清末の政治家・翁同龢(おうどうわ)だったのには驚いた。趣味の域を出ないんだろうけど、遠景の山容のぼかしかたなど、巧いと思う。

 各作品のキャプションを読んでいくと「光緒年間の進士、最後は狂死」とか「国民党と共産党の政争に連座し、歴史から抹殺された」とか、例によって、中国近代史の過酷さを感じさせる。

※付記。気になった「江川コレクション」を調べてみたら、旧蔵者の江川淑夫氏は、私の父親と同じ会社にいた時期があることが判明した。機会があったら、知っているか、聞いてみようかな…。
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小さないのち/花卉草蟲(高麗美術館)

2011-07-23 16:33:45 | 行ったもの(美術館・見仏)
高麗美術館 2011年特別企画展Ⅰ『花卉草蟲(かき そうちゅう)-花と虫で綴る朝鮮美術展』(2011年7月16日~8月28日)

 朝鮮・中国・日本の絵画を正しく弁別することは、専門家にも難しい作業らしい。素人の勝手な思い込みで、私が「あ、これは朝鮮絵画だ」と感じるイメージは、いくつかある。着色の花卉草虫図はそのひとつ。花や虫のひとつひとつは写実的なのに、全体としては、空想的というか、装飾的な雰囲気のただよう花鳥画だ(17世紀オランダの植物画に似ているかも)。

 これも、中国・江蘇省の常州(毗陵)で制作された「常州草虫画」の影響があるそうだが、朝鮮絵画では、むやみに虫(蝶・蜻蛉・蜂・蟋蟀など)が多く、花に比べて大きく描かれ過ぎている気がする。しかも図録の拡大写真を見ると、カエルやトカゲ(これらも虫の一類)はもちろん、微小なコオロギまでが、なんとも人間くさい表情をしていて、愛されていたんだな、ということが分かる。

 「秋草文」の白磁は、ひととき猛暑を忘れる涼やかさ。2階の常設展示室も、さりげなく夏向きのしつらえになっていて、楽しかった。

 この夏は、京博の特別展観『百獣の楽園』でも、虫やカエルの生き生きとした姿を見ることができるが、小さな生きもの好きの方は、こちらにもまわってみてはどうだろう。特に、京博の『黒漆葡萄栗鼠螺鈿箔絵卓』(琉球、17世紀)と本展の『黒漆塗螺鈿葡萄栗鼠文函』(朝鮮時代)などは、頭の中で並べてみると、おもしろい。

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祇園祭・宵山(屏風祭り)2011

2011-07-23 08:52:54 | 行ったもの(美術館・見仏)
7月16日の祇園祭・宵山。今年は鉾には1つも上がらなかったが、屏風祭りをしている地域を重点的に歩く。旧家や老舗が、所蔵する屏風や諸道具を一般公開するもの。

予約や観覧券が必要な旧家もあるが、こんな感じに、通りがかりに窓越しに覗き込んでいける家もある。写真撮影もOK。





ただ、宵山はテレビ取材などが入っていて、目ざわり。宵々山くらいがねらい目だと思う。





鉾に近づいて、懸装品を楽しめるのも宵山まで。中国テイストで統一された北観音山は私好み。





祇園祭は、町全体が壮大な美術館になる雰囲気!

屏風祭り地図2008(京都新聞)
実は、例によって、あまり下調べをして行かなかった。
そうか~杉本家住宅は予約なしでも入れたのか。宗達の『秋草屏風』が展示されていた、と!
土曜日の宵山は、室町通・新町通など、身動きできないような大混雑で、歩行者も一方通行に規制されていたこともあり、あきらめてしまった。
いずれ再トライしよう…。
コメント (2)
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