○東京芸術大学大学美術館 『芸大コレクション展』&『バウハウス・デッサウ展』
http://www.geidai.ac.jp/museum/
「芸大コレクション展」と言われても、いったい何が出ているのか、全く見当がつかなかった。サイトを見たら、けっこう古美術も出ていると分かって、行ってみる気になった。
冒頭は、13世紀前半の『孔雀明王像』。たぶん変色の結果、茶色と水色が中心の地味な画幅となっているが、明王も孔雀も、上品できりりと締まった、いい表情をしている。孔雀の尾羽と胸のあたりに、わずかに鮮やかな赤が残る。それから、曽我蕭白の『群仙図屏風』。同じ題名で、どぎつい原色をふんだんに使った彩色作品(文化庁所蔵)とは別物である。こちらは墨画。しかし、華麗さのカケラもない孔雀は、人造の怪物のようだ。フジツボの張り付いた岩にも見える。オコゼのような鯉も変。いや、貶しているのではなく、異形の蕭白ワールドを楽しんでいるんだけれど…。
続いて、河鍋暁斎の三幅対『龍神・侍者』は、達者で流麗な線に釘付け。徹底的にカッコよさを追求した衣装、表情、立ち姿は、無双キャラのデザインみたいだと思った。中央のケースにあるため、あまり人が立ち止まらないのが『小野雪見御幸絵巻』。鎌倉時代、13世紀後半の作。建築や御所車のデッサンが非常にしっかりしている。剥落のせいか、未完成なのか、下絵の線がよく見えるのが面白い。
近代絵画では、杉浦非水の『孔雀』に驚いた。非水といえば、三越呉服店のポスターなど、カラフルでモダンでグラフィックな作品が思い浮かぶが、これは伝統的な(丸山四条派みたいな)花鳥画である。ただし、見上げるほど巨大。それから、昨年、『パリへ-洋画家たち百年の夢』展のポスターにもなった黒田清輝の『婦人像(厨房)』に、久々に再会。高橋由一の『鮭』も意外とデカい。ただの鮭なのに、と思うと、そこはかとなく可笑しい。なお、以上の展示作品は第2期(~6/15)のもの。ほぼ全て、サイトに画像が上がっている。
さらに会場には、『東京美術学校とバウハウス』という特集展示コーナーが設けられ、東京美術学校図案科(現:デザイン科、建築科)の卒業制作を取り上げ、バウハウスの影響について考察している。実際に東京美術学校からバウハウスに留学した学生もいた。
ここで少しウォーミングアップをして、引き続き『バウハウス・デッサウ展』を見る。バウハウスは、1919年、ドイツにつくられた造形芸術学校である(1933年、ナチスの台頭とともに閉校)。私は”建築家の学校”のイメージが強かったので、建築図面や工業デザイン(家具など)の展示が主だろうと思っていたら、実にさまざまなものがあって面白かった。
グラフィック誌から人物や家具の写真をコラージュして作った建築図面は、それ自体、ひとつの作品のようだ。バウハウス・ダンスと題された舞踊パフォーマンスには目を見張った(フィルムは、90年代に”復元”されたもの)。また、”素材研究”とか”材質研究”と題して、布、木材、金属などを組み合わせた実験成果の数々(平面および立体のコンポジション)。写真、タイポグラフィー、ポスター、織物など。実際に製品化されたものもある。パイプ椅子や折りたたみ椅子って、当時は衝撃的に新鮮なデザインだったんだなあ、ということが分かった。
http://www.geidai.ac.jp/museum/
「芸大コレクション展」と言われても、いったい何が出ているのか、全く見当がつかなかった。サイトを見たら、けっこう古美術も出ていると分かって、行ってみる気になった。
冒頭は、13世紀前半の『孔雀明王像』。たぶん変色の結果、茶色と水色が中心の地味な画幅となっているが、明王も孔雀も、上品できりりと締まった、いい表情をしている。孔雀の尾羽と胸のあたりに、わずかに鮮やかな赤が残る。それから、曽我蕭白の『群仙図屏風』。同じ題名で、どぎつい原色をふんだんに使った彩色作品(文化庁所蔵)とは別物である。こちらは墨画。しかし、華麗さのカケラもない孔雀は、人造の怪物のようだ。フジツボの張り付いた岩にも見える。オコゼのような鯉も変。いや、貶しているのではなく、異形の蕭白ワールドを楽しんでいるんだけれど…。
続いて、河鍋暁斎の三幅対『龍神・侍者』は、達者で流麗な線に釘付け。徹底的にカッコよさを追求した衣装、表情、立ち姿は、無双キャラのデザインみたいだと思った。中央のケースにあるため、あまり人が立ち止まらないのが『小野雪見御幸絵巻』。鎌倉時代、13世紀後半の作。建築や御所車のデッサンが非常にしっかりしている。剥落のせいか、未完成なのか、下絵の線がよく見えるのが面白い。
近代絵画では、杉浦非水の『孔雀』に驚いた。非水といえば、三越呉服店のポスターなど、カラフルでモダンでグラフィックな作品が思い浮かぶが、これは伝統的な(丸山四条派みたいな)花鳥画である。ただし、見上げるほど巨大。それから、昨年、『パリへ-洋画家たち百年の夢』展のポスターにもなった黒田清輝の『婦人像(厨房)』に、久々に再会。高橋由一の『鮭』も意外とデカい。ただの鮭なのに、と思うと、そこはかとなく可笑しい。なお、以上の展示作品は第2期(~6/15)のもの。ほぼ全て、サイトに画像が上がっている。
さらに会場には、『東京美術学校とバウハウス』という特集展示コーナーが設けられ、東京美術学校図案科(現:デザイン科、建築科)の卒業制作を取り上げ、バウハウスの影響について考察している。実際に東京美術学校からバウハウスに留学した学生もいた。
ここで少しウォーミングアップをして、引き続き『バウハウス・デッサウ展』を見る。バウハウスは、1919年、ドイツにつくられた造形芸術学校である(1933年、ナチスの台頭とともに閉校)。私は”建築家の学校”のイメージが強かったので、建築図面や工業デザイン(家具など)の展示が主だろうと思っていたら、実にさまざまなものがあって面白かった。
グラフィック誌から人物や家具の写真をコラージュして作った建築図面は、それ自体、ひとつの作品のようだ。バウハウス・ダンスと題された舞踊パフォーマンスには目を見張った(フィルムは、90年代に”復元”されたもの)。また、”素材研究”とか”材質研究”と題して、布、木材、金属などを組み合わせた実験成果の数々(平面および立体のコンポジション)。写真、タイポグラフィー、ポスター、織物など。実際に製品化されたものもある。パイプ椅子や折りたたみ椅子って、当時は衝撃的に新鮮なデザインだったんだなあ、ということが分かった。