付け焼き刃の覚え書き

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「ステルス艦カニンガム出撃」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-05 | 架空戦記・仮想戦史
「指導的立場にある政治家の問題点は、その政治家の過ちや失策を、ほかの人々が血を流して償わなければならん点です」
 アルゼンチン大統領アントニオ・スパルサ。

 2006年3月、かねてより南極大陸の領有権を主張していたアルゼンチンが、イギリス南極基地を急襲し占拠した。このまま状況を放置すれば、南極は冬期にはいって長期間誰も身動き取れなくなり、結果的に領有の既成事実ができてしまう。そうなれば他国も南極大陸の資源確保に動き出すことは想像に難くない。
 僚艦の修理でリオデジャネイロに寄港していた、イージス・システムを搭載した誘導ミサイル駆逐艦カニンガムは、状況に即応できる唯一の戦力として、アルゼンチン軍の阻止任務に送り込まれるのだが……。

 書かれた当時は10年未来を想定したハイテク軍事小説。今の視点なら仮想戦記。たいした違いはありませんけれど、“スカートをはいたアーレイ・バーク”と評される、女艦長が主人公というのは近現代ものでは珍しいかな。女性の軍事分野への進出にともなってSFや日本の架空戦記では珍しくなくなりつつありますが。
 アメリカの新鋭艦1隻vsアルゼンチン空海軍という組み合わせは、ちょうどいいハンディキャップと見るべきか、アメリカ強すぎだろうと笑うべきか。でも、読後の感想は、軍事小説といいながらもしっかり海洋冒険小説だなあということ。勇敢なアマンダ・リー・ギャレット艦長と部下たちの物語で、ちょろっとロマンスめいた要素も取り入れ、敵方の事情にも振れつつ、南極圏での海戦を描いています。
 LORAINだのELINTだの横文字の軍事用語がどんどん出てきますが、なじみのない専門用語というなら帆船小説の船首縦帆引き帆索というのも十分わかりにくいので、今さら気にしません。わからなければ、巻末の用語集で確認するだけです。気にせず一気読み。

【ステルス艦カニンガム出撃】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【シー・コマンチ】【衛星迎撃】
コメント
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