
そんな江戸時代はヒット作だと10万部が刷られたという出版大国であった。
現代日本(正確には遠洋漁業の船上)から異世界に転移してしまったクロウは、傭兵稼業やら騎士としてのお役所勤めやら、あれこれやった末に晩年は魔法学校に通う近所の娘を孫のように可愛がる余生であった……はずが、いつの間にか肉体も若返り、魔王や魔女とともに第一級殺神罪と国家騒乱罪で世界中から追われる身になっていた。
そして元の世界への帰還。
ところが、少々時間がズレていて、彼がたどり着いたのは享保年間の江戸だった。250年ほど早かったのだ……。
見た目は少年、心は老人。
そんな主人公が、蕎麦屋「緑のむじな亭」に居候しながら、未亡人の妖怪画家にお小遣いをもらっては呑む打つ買うでスッテンテンになってしまったり、潰れかけている蕎麦屋の立て直しに奔走したり、捨子騒動に巻き込まれたりという、日常系コメディ。ただし、火付盗賊改方の殺人狂同心「袈裟斬り」中山影兵衛が登場するとたちまち死屍累累になる不思議。
時代劇ドラマや時代小説でおなじみのパターンを残らずぶち込んで、キレイにすっきり整理して、そこに鳥山石燕とか新井白石とか史実の人物を放り込んでだいたんに活躍させる一方で、さらに魔王や魔女や盲目の美少女按摩師や幼児愛好家の同心やら殺人狂同心やらガサツな呉服屋の娘やらあれこれ放り込み、これが何故かとっちらかった感じにならないのです。しかもテンポがいい。
元のウェブ版と比較すると、大筋は変わっていないものの書籍化にあたって細部まであれこれ手が入れられました。前後の事情を説明する異世界パートはややマシマシな一方で、「私はそんな奴らから君達を守るため、地獄の底からやって来た正義の使者なのかもしれない……」とか「姑獲鳥の──夏だ」とか、ちょっと問題になりそうなセリフはカット。もったいないね。
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