付け焼き刃の覚え書き

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「地球から来た傭兵たち」 ジェリー・パーネル

2015-01-20 | ミリタリーSF・未来戦記
 『そんな(頭の中に視覚的に飛び込んでくる要素の多い)SFだから、SF小説を読む場合にも、自然と視覚的な読み方をするSFファンがいる』ということから、本文と豊富なイラストによる相乗効果を意図した作品がアメリカで刊行されるようになったのが1970年代終盤のこと。これを総じて「イラストレイテッドSF」と呼び、これが日本で翻訳刊行されるようになったのが1980年の『魔法の国が消えていく』以後のこと。
 もはやライトノベル史を語るなんてときでも、「ソノラマ・コバルトもの」と同じくらい忘れ去られている「イラストレイテッドSF」という言葉ですけれど、こういう流れがあってのラノベ史です。

 CIAの作戦でアフリカに送り込まれたアメリカ軍の正体だったが、迎撃に投入されたキューバ傭兵部隊に包囲されて壊滅寸前となった。そんな彼らを救出したのは、空飛ぶ円盤だった。
 救い出された36名の兵士に対し、現れた宇宙人は彼らに傭兵となって惑星トランに赴き、その中世レベルの社会を支配して宇宙人が必要とする農作物の供給を維持することを提案した……。

 武器弾薬を一式そろえたアメリカ陸軍の兵士1個小隊が、いまだローマの騎士軍団レベルの世界で支配権を確立すべく、現地の王侯貴族の勢力と戦ったり懐柔したりしながら、宇宙人の陰謀に立ち向かおうとする話。
 『アーサー王宮廷のヤンキー』や『戦国自衛隊』みたいに現代のテクノロジーで中世社会に覇を唱えようとするけれど、最後は時代の流れと物量に押し流された……みたいなストーリーから、『ゲート』みたいに現代兵器はきちんと運用すれば中世レベルの軍団くらいはなんとでもなるというラノベ的なチートな展開の中間くらいの物語。
 その狭間を埋めるのは、戦術であり科学技術であり大元の教育。今は中世レベルで、地球から持ち込んだ武器弾薬は尽きようとも、きちんと技術を継承していけば1世代でスペースシャトルくらいには追いつくぞ……というところまで。

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コメント
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