「俺らが一番何とかしなきゃいけないのは、この行き当たりばったりなところだと思うんだけどよ」デュランのツッコミに誰も反論できなかった。
少女アネットを助けて魔人からの逃亡を続けるマリウスたちは、幻覚魔法でデュランとベンの姿を人間に変えて街に潜入するが、何分にも異世界の高校生と森の奥に隠れ住んでいた少女では社会常識に疎く、あちらこちらでトラブルの種をまき散らしていく。
この災害級のモンスターや魔人すら問題にしないチートな能力に対して、常識知らずで脇の甘いパーティーで唯一の常識人は、なぜかオークのデュランだった……。
雪山で遭難死して、気がついたら異世界に転生していた高校生の冒険譚。チートな魔法使いと天然のモンスターマスターの前に敵はなし。
へたれでチキンなくせに、やることはやっている主人公。転生といっても赤ん坊から生まれ変わったわけではなく、召喚とか転移というにはゲームキャラのチート能力を身につけていたという話。あのジョン・カーターも死んだと思ったら火星に転移していて、しかも重力の違いから超人的な能力を身につけていたわけで、それを思うと王道の古典パターンです。
ただし、バロウズとかムアコックなどの海外ファンタジーでは、超人的な活躍の果てにヒロインを手に入れた主人公が次の瞬間に元の世界に引き戻されてしまい、異世界に戻る世界を探して現実世界で苦悩する満たされないエンドが１つのパターン。
そういう「すべて御破算」エンドがほとんど見られないあたりが最近の日本的特質なのかもしれません。というか、自分的にはバロウズやムアコックに対して「なんで、素直にハッピーエンドにしないのだ！？」と３日間ほど問い詰めたい気分だったので、それはまったく気にならないわけですが。
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