付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「遙か凍土のカナン(7)」 芝村裕吏

2016-07-23 | 架空戦記・仮想戦史
「この世の全ては、一人の可愛い女がいれば大抵どうでも良くなる」
 国造りも大事だけれど、可愛い妻の待つ家庭ほどではないと新田良造。
 世界大戦もシベリア共和国も、複雑な家庭問題ほど新田を苦しめはしなかった。

 世界情勢は大きく揺るぎ始めていた。サラエボでオーストリアの皇位継承者が暗殺され、それをきっかけにした戦火が瞬く間に世界中に広がっていったのだ。時に1914年。
 しかし、東シベリアの地に独立国家を建設しようと政務に邁進する新田良造の姿は、仲間のたちの誰が見ても最愛の妻であるオレーナを失った痛手から立ち直ったようには見えない危ういものだった……。

 この平和そうな表紙イラストと帯の「大團圓(大団円)」の文字を見ながらも、いや、また騙されるかも……と最後までドキドキしながら読了。日露戦争から始まった物語も世界大戦を経て、建国と祖国防衛戦争、そしてその後の歴史まで……と流れをたどれば見事に「シベリア共和国建国秘話」なんだけれど、そんなイメージがあまり読後感に残らなかったのは、建国と祖国防衛にかかわるアレコレより新田家のお家騒動の方がよほど修羅場っぽかったため。
 ポイントはあの薄っぺらかった娘がいつの間にかエプロンごしでも分かるほどに巨大化した、コサックの血の怖ろしさと、ヨシフのフルネームがやっと最終巻の半ばを過ぎて登場したあたりかな。
 そしてなぜか「パンダコパンダ」の歌を口ずさんでいる私。

【遙か凍土のカナン(7)】【建國篇】【旅の終わり】【芝村裕吏】【しずまよしのり】【星海社】【凍土の英雄譚】【アラタが倒れました】【三人一緒】【迫撃砲】【サイドカー】【機甲部隊】【シベリア出兵】【ロシア革命】【ユーラシアを股にかけた恋と冒険の旅路】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする