付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「本好きの下剋上7」 香月美夜

2016-07-21 | 本屋・図書館・愛書家
「……わたし、父さんの、お嫁さんになりたい」

 長い冬を終えて春となった。
 弟が誕生し、新しいインクの開発やグーテンベルクたちとの新しい本作りも進んでいく。
 このまま順風満帆に進むかと思われたが、その裏では巫女見習いの少女マインを嫌う神殿長や貴族たちと結託した、他領の貴族が彼女の魔力を狙って動き出しており、あちこちに歪みが生じ始めていた……。

 第二部「神殿の巫女見習い」編の完結です。ウェブ版にプロローグ部分とエピローグ部分が挿話され、いろいろ話の展開が分かりやすくなっています(あの人が高みへの階段を上がられたくだりとか)。
 周囲の人が決して意地悪をしているわけでも愚かでもないのに、最善の方法を模索しているうちに主人公がだんだん追い詰められ、これまでの生活を切り捨てるしかなくなる展開は、この物語全体の大きな山場のひとつのようです。本当の下克上の始まりはここなのでしょう。
 一見ほのぼのコメディ風ではありますが、実際には魔力の有無と多寡で厳格な身分制度が構築されていて、実際それなしでは社会が動かないようになっている(見方によっては)ディストピア。魔力の無い平民など簡単に善悪関係なく、ちょっと邪魔だから「処分」しとこうかと言われて消えて何事もなかったように終わってしまう世界です。
 だからこそ、現代日本の常識と平民である家族への愛情を抱いて生き抜こうとする主人公の活躍が、名作劇場的に面白くなっているのですね。

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