付け焼き刃の覚え書き

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らのべヒロイン列伝「阿部将翁(異世界から帰ったら江戸なのである)」

2018-04-07 | 雑談・覚え書き
○阿部将翁 「異世界から帰ったら江戸なのである」左高例(エンターブレイン)

 今時は異世界転生・転移ものはいろいろあって、書店のライトノベル新刊の半分がそうじゃないかという気がするけれど、そのお約束パターンを1回転半ひねったのが、この話。
 ロシア領海でカニ密漁船にバイトで乗り込んでいた九郞は、銃撃してくる巡視艇から逃走する最中に冬の海に転落。気がつけば異世界にいた。そこで傭兵やったり、冒険者になってダンジョン探索したり、騎士になったり、波瀾万丈の人生を送った果てに魔女や魔王に関わって95歳にて指名手配犯。逃走中にそのまま元の世界に帰還できたけれど、戻った先は日本は日本でも享保年間、東京ではなく江戸なのである。
 かくして、身体は少年、精神は老人の九郞は、知り合った蕎麦屋に居候しながら“なんでも屋”として生計を立て始めたのだが、周囲は彼のことを「細くて長くてモノを縛るのに使うもの」のように見るのだった……。

 ウェブ連載分も序盤の3巻にて無念の打ち切り。メインキャラが出そろい始めて、これからというときなので、肝練り大好き薩摩武士とか、同心二十四衆とか、有象無象のチョンガー忍者たちとかほとんど出番がなく、ここから残念キャラが増えて、九郞のヒモっぷりに磨きがかかるんだよ?
 そういうわけで活躍しているヒロインも蕎麦屋の看板娘のお房か、巨乳未亡人で妖怪画家の鳥山石燕(アル中)くらい。ただ、書籍版ではなくウェブ版準拠なら、キツネ面をかぶった本草学者の阿部将翁をイチオシしたいところです。

「いえね、頭を打って目が覚めないってんで……ちょいと頭骨に穴を開けて挫傷していないか確認しようと」
「明らかに江戸でやっていい文明レベルの医療ではないよな、それ」

 九郞たちが困っていると薬箪笥を担いでひょっこり登場。怪しげな薬やら医術やらでお役立ちの薬屋ですが、その正体は不明。1000年生きているとも噂され、その目撃談は全国各地にあり、男とも女とも童とも老人とも言われる謎の存在なのです。書籍版ではもっぱらきつね目の男の姿で登場しますが、やがて妖艶な美女やらこまっしゃくれた童女などさまざまな姿でしれっと現れ、九郞を翻弄していきます。イメージボイスは石田彰あたり。
 この将翁の変わりっぷりも、この作品後半の魅力の1つです。
コメント
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