付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります」 田舎犬派

2020-07-27 | バイオシップ・人工知能
「そうだ、配信者になろう」

 ここ百年ほど人類文明は停滞していた。効率化社会時代の間に絶対に必要でないされた文化や風習、技術は廃れ、その情報さえ失われてしまったのだ。
 今はこうした失われたデータをサルベージしながら復活させようという動きが起きつつある。何人ものヴァーチャル配信者が所属するフロントサルベージ社もそうした活動を支援する外郭団体の1つで、そのヴァーチャル配信者たちはサルベージされた昔のゲームや文化を紹介することが主なテーマになっている。
 そんなある日、わんこーろという名前のヴァーチャル配信者が新たに配信を開始した。リスナー10人から始まった特になんということのないおしゃべりの配信だったが、そこでわんこーろがリスナーの質問に答えて提供したデータはいまだサルベージ不可能な100年以上前のログデータだった。
 ありえないデータの存在に関係機関は真偽を確認すべく動き出したのだが、そのわんこーろなる幼女の実在は誰にも確認できなかったのだ……。

 ネットの片隅で肉体を持たない電子生命体になってしまった転生者が、ヴァーチャル配信者として広大なネットの片隅に失われた日本の原風景を再構築していく物語。
 基本はゆるゆる配信もので、ヴァーチャル空間を通じての他の配信者やリスナーたちとの交流がメインなのだけれど、何も存在しない真っ白な空間に草が生え、木が育ち、山ができていく天地創造と、そこに人工で命を生み出していく試行錯誤が付け加えられるとちょっとひと味違った雰囲気に。
 異世界に近代都市や要塞を建設するような話は多いけれど、電脳空間に昭和以前の日本の田園風景を再構築する話って珍しいですよね。

【転生して電子生命体になったのでヴァーチャル配信者になります】【田舎犬派】【ハーメルン】【ヴァーチャル配信者のゆるゆる交流記 】【地下都市】【となりのトトロ】
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「フシノカミ3」 雨川水海

2020-07-27 | 本屋・図書館・愛書家
「私が今、こうして生きていられるのは、嘘のおかげです。本の中の楽しくて優しい物語、つらいことも苦しいことも、必ず解決する都合の良い作り話にすがって生きて来られました」
 だから嘘は好きだとアッシュは“彼女”に語る。

 領都イツツに留学し、都市全体の生活水準向上を目指していたアッシュは、軍子会で鍛冶屋の息子ヘルメスが他の子供たちに莫迦にされているのを目撃した。それをアッシュは見逃せなかった。
 ヘルメスが手にしていたのは、どこか歪で不格好な鉄の塊。しかし、それこそは紛れもない航空機の模型だった。自動車どころか内燃機関すら存在しない世界で、少年は断片的な文献の記述から航空機を再現しようとしていたのだ。
 アッシュは彼を嗤う人たちを見返すため、そしてなにより自分自身の夢のためにも航空技術の再生を目指して動き始めた……。

 留学篇の終わり。
 何度も文明が滅びながらも再生してきた世界にとって最大の問題は、古代文明があらかた資源を食いつぶしてしまったこと。だから、文献が残っているわりには再生が遅れているのです。
 だから、できることから一歩ずつ。囚人のおっさんたちとも良い関係です。

【フシノカミ3~辺境から始める文明再生記~】【雨川水海】【大熊まい】【オーバーラップノベルス】【世界に変革をもたらす少年の軌跡を紡いだ文明復旧譚】【内政ファンタジー】【堆肥】【トマト】
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