「偽聖女クソオブザイヤー」 わからないマン

　不動のニートことwebライターの不動新人は、明け方近くまでゲームをやった果てにばったりと倒れるように就寝。目が覚めたら見知らぬお城の中にいた。
　どうやらプレイしていたギャルゲーの『永遠の散花～Fiore caduto eterna～』の世界に転生していたのだが、このゲームはどのルートを選んでもメインヒロインが死ぬクソシナリオで、しかも自分は嫌われ者の偽聖女エルリーゼになっていた……。

　いつの間にかゲームそっくりの世界に入っていた、しかも断罪されてドロップアウトする悪役に……という、うんざりするほど読まされた定番ネタを、お約束通り破滅ルートを回避するよう奮闘するうちに脇役なのに誰よりも主役らしくなっていくというパターンなんだけれど、話はさくさく進むし、元の現代日本と異世界との平行展開でストーリーがリンクしていて面白いの。
　ダメなキャラクターにダメダメな人格が憑依して、結果的にすべてＯＫみたいな話。思うに、これは主役の偽聖女の性格にも依るかな。マイナスにマイナスを掛けたらプラスになった……みたいな話です。
　中の人が、表面を取り繕うのが上手くなりすぎた、破滅指向のサイコパスなんですね。だから、特定の誰かに思いを寄せることもなく、自分の身の犠牲など屁とも思わず、必要なことをただ誰よりも熱心にやり続ける、本物よりも本物らしい聖女になれるのです。トロッコ問題なら、どちらも選ばず、自分が線路に身を投げ出してトロッコを転覆させたらええんやろ？みたいな。
　だらだらと日常生活とか修行編とかラブラブ三角関係が始まるかと読み始めたら、いや展開早すぎて休みどころを見失って一気に読みふけるはめに。そして、おお、ラストバトルだ！……という、まさに血を吐きながら続ける美少女ゲームのお話。
　妻が思わず読み始めてしまい、気がついたら夜が明けようとしていたという問題作。というか、カクヨムのシステム的な問題で、読んでいる途中であと何話残っているとか分かりにくいんですよね。だから「ここらで区切りつけよう」というタイミングがつかみにくいのです。

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