付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「壺の上で踊る」 海老

2021-08-30 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 侯爵令嬢リリー・ミール・サリヴァンは、父親が食客として迎え入れた剣士カリ=ラの技に幼くして魅入られた。そして、淑女として歩むべきはずの道先を外れ、彼女は地獄めいた戦いの道を進むこととなる。
 人を殺す剣あり、活かす剣あり。けれど、殺す気で打つというのは、普段からできるものではない。だから彼女も師に倣い、自らを自己暗示で死の淵に追い込むために、壺の上で踊る。
 行く手に現れるは、魔に憑かれた巨虎、斬られてなお黄泉がえる魔人、信仰なき聖女候補に吸血鬼狩り。いずれが敵か味方か正義か悪か善か邪か、その道筋は未だ見えない。ただ、定められたシナリオから外れ、足を踏み出したばかりである……。

 魔法が廃れつつあり、銃が台頭し始めるけれど、主流は剣や弓とか槍。剣の腕を磨いても上には上がいて、1つとして同じ強さはなく、壁は乗り越えるたびにさらに高い壁を生み出していく。闇の怪物が邪悪なら、それを打ち倒すには怪物を上回る邪悪にならねばならないのか? 剣豪小説テイストのファンタジーで、『辺境の老騎士』とか『勇者あるいは化け物と呼ばれた少女』などの系統のヒロイックファンタジー+戦記の、歴史の転換点となった激動の時代を、剣士となった1人の令嬢視点で描いた作品。レーベルでいうならエンターブレイン向き。
 正統派のヒロイック・ファンタジーのようでいて、物語の端々に「魔界(ニホン)」なんて不穏な単語が見え隠れしているあたりが今風。90年代までなら「あれは宇宙からの来訪者だったのだ」とか「クトゥルーの眷属らしい」という話になっていたのかも知れません。そういう意味で、この視点の話は今だからこそ生まれたのかも。

【壺の上で踊る】【海老】【小説家になろう】【カクヨム】【蚊人間】【転生】【人生やり直し】【NPC】【課金の神具】【童子斬り】
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