「カリオストロの城」 監督：宮崎駿

「光と影を結び時告ぐる高き山羊の陽に向かいし眼に我を収めよ」
　指輪に刻まれし文字。公爵家に古くから伝わる言葉。どこの公爵家かだなんて、ヤボなことは訊かないこと。当時の僕らにとっては一般教養に等しかった作品なのだ。

　ストーリーとかシーンの構図とか『隠し砦の三悪人』とか『やぶにらみの暴君』やら往年の名画の影響を色濃く受けているけれど、それを「ルパン三世」というフォーマットに押し込んで面白く語ってくれたのだから観客としては文句の付けようがない。すべての創作は模倣から始まるのだ。
　さて、当時を思い起こせば、とっても痛い。
　あの頃の名古屋はロードショーでも二本立てだったけれど、抱き合わせが見たくもない映画だと地獄だよね。『カリオストロの城』の併映は『ミスターＢｏｏ～ギャンブル大将』。朝一で『カリオストロの城』を見たら『ギャンブル大将』。我慢してみて『カリオストロの城』をもう１回。３回見るには『ギャンブル大将』をもう１回かあ。つらいなあ……。
　結局２回で諦め、今度は別の友人と連れだってもう１回。いやあ、五月蠅いガキだったと思うよ。写真部の友人は三脚立てて撮影しまくり、こっちは３回目なもので「次のこういうシーンを撮れ」とせっついて……他のお客さん、ごめんなさい。
　でもって映画館から帰って、写真部は現像室に飛び込み、こっちは全セリフにキャプションをつけてノートに書き出していたから、その頃の記憶力はかなり良かった。これも脳ミソの無駄遣いだよね。
　ところで、興行的にはふるわず、当時のアニメックで「残念なことに人気は出なかったが、物語の展開や作画、演出などすべてにおいて他の追随を許さないほど素晴らしい出来であった」と評されてます。宣伝も悪くなかったと思うんだけど、まだ世間一般には「宮崎駿」のブランドが認識されてなかったのだ。

　ちなみに劇中の画面に映し出される公爵家の綴りが、シーンによって「Ｇ」の位置が違っている。だって見たんだもの。表記が「CAGLIOSTRO」になっているところと「CALIGOSTRO」の２通りがあって、どうやら前者が正解らしい。

（2017.10/13　2022.05/23改稿）

【ルパン三世　カリオストロの城】【宮崎駿】【モンキー・パンチ】【東京ムービー新社】【東宝】【生きては還れぬ謎の古城でついにめぐり逢った最強の敵】【山田康雄】【小林清志】【井上真樹夫】【増山江威子】【納谷悟朗】【島本須美】【石田太郎】【永井一郎】【大野雄二】【ボビー】【大塚康生】【おじさま】【対戦車ライフル】

「転生オズの魔法使い」 内田健

「君たちが誰かを自分の世界に召喚するとして、目的もなしに呼ぶだろうか。わざわざ変身させてまで。そして何も成さないまま、元の世界に返してもらえると思うかね」
　つまり、タダでは返さないよと北の魔女ユミル。

　オズの国に召喚された松島拓実ら高校のクラスメイト４人は、ライオンやわらのかかし、ブリキのきこり、栗毛の少女……ファンタジー『オズの魔法使い』のメイン登場人物の姿と能力を与えられていた。物語との間に乖離が生じていて、改変されているふしがある。それを外部から呼んだ者に検証し、解決して欲しいというのだ。
　そして、北の魔女のもとで基礎訓練を積んだドロシーとライオンたちは、レインレストの街に向かい、ハンター協会で登録を済ませると依頼の掲示板に目をやった……。

　今までライトノベルを刊行していたレーベル以外にもハヤカワ文庫や新潮文庫、文春文庫などが参入してきているので今さら驚くべき話ではないし、もともとＳＦやファンタジーが多かったハルキ文庫なので当然の帰結かも知れませんが、４月のラインナップは「新・エンターテインメント」と称して転生ものが目白押し。
　今の転生ものはゲーム世界転生でも小説世界転生でも作者しか知らない原作をタネ本にしているものが多いので、なにがどうしてそうなるのか作者の都合次第になりがちなので面白さ半減ですが、誰もが知っている名作なら確かに結末を知っている読者をさらにハラハラドキドキさせられるかもしれません。４月は『オズの魔法使い』以外にも『ロミオとジュリエット』『マクベス』の転生ものが並んでいますが、５月は『シートン動物記』と『とりかえばや物語』が続きます。
　一気に押し込もうという腹のようです。

【転生オズの魔法使い】【内田健】【maeka】【ハルキ文庫】【名作を改めて新しく読める、新・エンターテインメント】【マンチキン】