付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「小説 すずめの戸締まり」 新海誠

2022-11-28 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「いいなあ、草太のやつ!」
 なにやら闇の深そうな(ぴりぴりしっぱなしの)叔母と姪を乗せて何時間も車を走らせたあげく、愛車が路肩に転落して使えなくなったとみるやあっさり置いて行かれた芹澤だったが、ひとしきり大笑いした。散々な目にあったけれど、自分がなにかの役割を果たしたような達成感があったのだ。

 映画『すずめの戸締まり』の小説版。映画制作と同時に執筆していたそうなので、ノベライズじゃないですね。原作というより、あくまで「小説版」かなあ。すずめ視点で事件を回想する、彼女の旅の物語。ここ大事。なので、彼女が自分で体験したことでなく、後で本人から聞くこともできなかった部分の物語については言及されてません。具体的には左大臣と羊朗さんとのやりとりとか。
 羊朗さんといえば、妻は「羊朗さんの若い頃の外伝も見たい!」と言っていたのだけれど、息子の「それよりも、今の羊朗さんの声(松本白鸚)で『お返し申す!!』とか聞きたくない?」という意見に「それ!」と共感してました。

小説 すずめの戸締まり】【新海誠】【角川文庫】【過去と現在と未来を繋ぐ、鈴芽の戸締まりの物語】



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「天気晴朗なれど波高し。2」 須賀しのぶ

2022-11-28 | 水の世界・海洋冒険SF
「悲劇こそ笑い飛ばそうというか、人に言われるより自分で道化になって笑いをとったほうがまた救われるっつうか」
 トルヴァン・コーア海尉は、帰港したら新妻が消えていた男の心理をランゾットに説く。

 南洋の剣島沖を通過する際には、ワーデン神に芸を捧げて航海の安全を祈るという。剣島は今回が初めてだというランゾット海尉が今回の士官代表となり、士官として水夫なんかには負けない芸を披露するよう命じられる。
 実はギアス家には代々ワーデン祭で演じる演目が引き継がれていたが、それは現地の巫女が舞ったという神舞を腰ミノ一つでむくつけき男たちが手足をくねらせ踊るというものだ。とてもじゃないがやってられない芸だが、あのエリートコースを進む兄たちも、謹厳実直な父も、もしかしたら祖父すらこの芸には全身全霊を以て挑んでいたのだ……。

 作家志望で船乗りはなりたくないけど、家が代々海軍提督を輩出する名門でなりゆきで海軍士官になってしまったとはいうものの、辞める機会があっても辞められないのが海の男の一族で、そこが女たちには理解はしても不満が残るところなのだ。こいつもかと。
 前巻で士官候補生として三等艦ジュリエンド号に乗り込んだランゾットも18歳。今回はラティナ号に五等海尉として乗艦。ワーデン祭の出し物に悩むあたりから娼館通い、奴隷交易、海賊船襲撃あたりまでが描かれます。イラストもちゃんとポイントを押さえていて、かつ小柄でパッとしない主人公はいつも冴えない様子で描かれ、活力たっぷりの女性陣とは対照的です。
 刊行されたのは2003年。この頃は、日本でも海洋冒険ものがそれなりに流行っていて、「海の勇士ボライソー」シリーズがクライマックス。「英国海軍の雄ジャック・オーブリー」シリーズを『マスター・アンド・コマンダー』のタイトルで映画化されてます。最近、海軍ものはパッとしないねえ。
 海軍入門編くらいのライトタッチで読める海の男たちの物語です。

【天気晴朗なれど波高し。2】【須賀しのぶ】【船戸明里】【コバルト文庫】【愛と笑いと冒険の青春海軍コメディ】【遺族年金】【娼婦】【奴隷貿易】【私掠船】【切り込み】
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