「話せば分かるは幻想だ。話しても分からないからこそ、マニュアルというものが必要となる」桂華電機連合のＣＥＯとなったカリン・ビオラは、画像解析も使って徹底的にすべてをマニュアル化することにアメリカの強みがあると瑠奈に説明する。
桂華グループ内部でお嬢様を下ろそうとするクーデターの動きがあることが判明した。頂点にいる瑠奈自身がまだ中学生で、きちんとした公的身分がないことにつけ込まれているのだ。それに彼女を組織の頂点から引きずり下ろそうとするのは悪意によるものばかりではない。むしろ親身に思う身内こそ、危険な立場に彼女を置いておきたくないし、そもそも働き過ぎではないか。ひれは社会や法律が彼女を「子供」とみなしている限り避けられないことなのだ。
そんなお家騒動の震源は樺太銀行。巨額の不良債権を抱えて再編待ったなしの金融機関であると同時にロシアン・マフィアのマネーロンダリングの舞台であり、その原資は東側崩壊を狙った米国の工作資金というところだ。兆単位の金が動く世界だから、テロの１つや２つは必要経費の内という。成田空港でテロが起こり、自衛隊も出動する中、お嬢様も自爆テロの標的となった。
しかし、やられっぱなしではいないのが桂華院瑠奈だ。まずはいやがらせから始めよう……。
「だって、たった四千億円でしょう？」
いきなり「第二青函トンネルに掘るわよ！」と言い出す桂華院瑠奈の「お嬢様ジョーク」。単位は気にしない。
表紙イラストは車窓イラストとほのぼのしてますが、あいかわらず中身は火薬庫。グループ内部の造反劇、その背後にいるハゲタカファンドやらロシアンマフィアやらＥＵやら共産中国。イラクでの戦火拡大に伴ってテロも起きるし、日銀砲は炸裂するし、恋住政権は華族特権の廃止を諦めていないし、省庁はグループを解体しようとあの手この手で揺さぶりかけてきます。その合間にアカデミー賞の授賞式が流れてサメ映画篇に突入したりと予断を許さないので、絶対に飛ばし読みは出来ません。濃厚。時代は2003年。物語も酷い世の中だけど、リアルの2003年はお嬢様がいないのでもっと大変なのだと笑うべきところ、喝采を上げるべきところで(この先20年を回顧して)泣いてます。
巻頭の登場人物一覧、家系図、桂華グループ関係図が役に立つなあ。欲を言えばグループ会社の役員も既出分は記載希望……。
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